日本で長く暮らす外国人の方にとって「永住ビザ」は、安定した生活やキャリアを築くために大きな一歩です。
しかし、いざ申請を考えると「なぜ納税や社会保険の加入がそんなに重要なのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。
実は、納税や社会保険への加入状況は永住ビザの審査で最も厳しくチェックされるポイントのひとつです。
ここでは、永住許可申請における納税記録や社会保険加入の関係について、実務経験に基づいて分かりやすく解説しますので是非参考にしてください。

【1】納税義務を果たしているかどうかの重要性

永住ビザ審査において、税金をきちんと納めているかどうかは「日本社会の一員としての信用」を判断する基準になります。

ここでいう税金とは主に以下の2つものがチェックされます。
①所得税
②住民税

また、一定の場合、消費税や贈与税、相続税等も対象となります。


特に住民税は市区町村から過去5年分の「課税証明書」と「納税証明書」を提出する必要があり、未納があれば一発で不許可につながります。
「年収が少ないから大丈夫」「一部の年だけ遅れたけど、今は払っているから大丈夫」――こうした認識は危険です。
永住申請では過去数年分(通常は5年程度)の納税状況をトータルで審査されるため、1回でも滞納があるとマイナス評価となります。
加えて、未納なく支払っているかどうかだけでなく、『納付期限に遅れることなく支払っているかどうか』が審査され、もし納付期限を遅れて支払いをしたことがある場合は、不許可リスクがきわめて高くなりますので注意してください。

【2】社会保険未加入や未納がある場合のリスク

永住ビザにおいて、納税と同じくらい重要視されるのが「社会保険への加入」です。
会社員であれば厚生年金や健康保険、個人事業主やフリーランスであれば国民年金・国民健康保険に加入する義務があります。

社会保険に未加入だった場合のリスクは以下のとおりです:

  • 「法律を守っていない」と判断される
  • 未納期間があると「生活の安定性がない」と評価される
  • 就労状況そのものが疑われる

等のような印象を審査官に与えてしまいます。特に永住ビザは「日本社会に根付いているか」を重視します。
そのため「社会保険未加入=日本社会での義務を果たしていない」と見られてしまいますので納税義務と同様に注意していきましょう。

【3】国民年金・国民健康保険の扱い

フリーランスや小規模事業者として活動している外国人の方からよくある質問が「国民年金や国民健康保険に入っていなかったらダメですか?」というものです。

結論から言えば、未加入や未納は永住許可に大きくマイナスになり不許可リスクは高まります。
実務上、年金や健康保険の加入状況を確認するために「納付記録」を提出する必要がありますので、記録は保管しておきましょう。

※下記のような場合は要注意です。
①年金を数年間払っていなかった → 不許可の可能性大
②一部未納があったが後から追納した → 不許可にならない場合もある

ポイントは「一時的に未納があっても、きちんと追納して適正な期間正常に支払っているかどうか」です。
①のような場合はしっかりと適正期間継続して納めていくことが必要ですが、②の場合については状況によっては許可が下りる可能性もありますので、専門家にご相談ください。

また、年金の加入実績の証明については、

①ねんきん定期便
②ねんきんネット


上記2つの方法で確認することができます。
ほとんどの方が②のねんきんネットを利用していますので、日本年金機構のホームページから『各月の年金記録』を印刷して提出することとなります。一度しっかりと未納なく納められているかどうか確認してみてください。

【4】よくあるトラブル事例(未納による不許可)

実際に永住申請が不許可になった例として、以下のようなケースがあります。

■住民税の未納が発覚したケース
→ 申請の直前に一括で支払ったが「過去に未納があった」として不許可に。
■国民年金を数年間払っていなかったケース
→ 後から追納したが「長期未納」と判断され不許可。
■会社員なのに社会保険未加入だったケース
→ 雇用先が加入させていなかったことが原因だが、申請者本人の責任として不許可に。

つまり、「今払っているから大丈夫」ではなく、過去数年にさかのぼって整合性のある記録を用意することが大切です。

また、稀に自営業をされている方にあるケースで、

年金はしっかりと期日に遅れることなく払っていたが、収入が安定せず年金の支払いが厳しかったがために、年金事務所に所得の過少申告をして実際に払うべき額より少なく年金を支払っていた。というケースも多々あります。

特にコロナ禍で営まれてる事業に打撃を受けてしまって、事業収入が減ってしまったという自営業の外国人の方に多い事象です。今は事業も回復しており収入も安定して問題なく支払っていたとしても、入管の審査官は申請者が「正しい時期に正しい金額」を納付しているかどうかをチェックしますので、自営業の方も2年間はそのあたりは注意して納めていきましょう。

【5】申請前に必ず確認すべきこと

永住申請を考えている方は、税金・年金関係について以下のチェックを必ず行ってください。

  • 住民税を過去5年分、未納、遅滞なく支払っているか
  • 国民年金・厚生年金について過去2年間、納付記録に未納、遅滞がないか
  • 健康保険に加入しているか
  • 納税証明書を市区町村や税務署で取得できる状態か
  • 会社員の場合、勤務先で社会保険加入手続きをしているか
  • 各種税金・年金を支払った領収書や記録を保管しているか

これらを事前に確認しておくことで、申請時に「想定外の不許可」を防ぐことができます。

【6】不許可を防ぐための対策

一番安全に永住申請をして許可を得るためには、住民税は5年間(例外あり)年金は2年間それぞれ未納や遅滞なく支払いを継続していくことです。
もし過去に未納や未加入があった場合、すぐにできる対策は以下の通りです。

  • 未納がある場合はすぐに完納する
  • 可能であれば追納を行い、証明書を取得しておく
  • 会社員の場合、勤務先に社会保険加入を徹底してもらう
  • 申請書類には正直に状況を説明する理由書を添付する

税金や年金をコンビニ等で支払いをしている場合は、領収書は永住申請時に提出する必要がありますので必ず保管しておくことが重要です。
また銀行引き落とし等の場合は、その引落しの履歴が記帳された通帳の写しを提出することになりますのでしっかりと記録しておきましょう。
特に過去に未納や遅滞があった場合の理由書は効果的で、「なぜ未納になったのか」「現在はどう改善しているのか」を明確に書くことで、マイナス要素をカバーできる場合があります。
未納や遅滞が「一回だけだから」「一日だけ遅れただけだから」大丈夫と思わずしっかり報告したほうが後で発覚するよりも審査官の印象は良くなりますので注意しましょう。

【まとめ】

永住ビザの審査は「長期的に安定して日本で生活できるか」といった目線で審査されます。
それを納得させる根拠として、納税状況・社会保険加入状況は最重要ポイントになります。
「今は払っているから大丈夫」と思っていても、過去に未納があれば不許可となる可能性は高いので、永住権の取得を検討されておりましたら、注意してきましょう。


特にこの納税状況については、永住権取得後も欠かさず正しい時期に納付し続けていただく必要がございます。
令和6年の入管法改正により、永住資格が取り消されるルールが追加され税金・年金・健康保険等の公租公課を正当な理由なく支払わない場合は永住資格が取り消されてしまうことがありますので、永住権獲得後も油断せずに注意をしていきましょう。

逆を言えばこの要件を問題なくクリアしているようであれば、積極的に永住ビザの取得にチャレンジしてみてください!
永住ビザ申請は一回不許可になると、今後の再申請の際にも大きく影響を与えてしまいます。そのため、永住ビザ申請にあたり少しでも不安があれば専門家に相談するのが最も安全な方法です。
当事務所では、永住ビザに特化したサポートを行っており、過去の納税や社会保険の記録整理から理由書作成までトータルでサポート可能です
「自分でできそう」と思った方も、「やっぱり難しそう」と感じた方も、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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