【1】就労ビザ更新の基本知識を解説
就労ビザの更新は、単なる書類の提出ではありません。
入管は「今後も日本で適正に働くことができるか」を判断するため、さまざまな事実を総合的に審査します。
本章では、まず「更新審査がどう行われているのか」を整理しつつ、初めての更新でも迷わない基本事項を網羅します。
①日本の就労ビザとは?更新で見られるポイントの全体像
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務/技能など)は、外国人が日本で働くための在留資格です。
更新時に見られる主なポイントは下記の通りです。
- 現在の仕事内容が、在留資格と一致しているか
- 安定した収入があるか
- 会社の経営が安定しているか
- 年金・社会保険・住民税の納付が適切か
- 転職歴・休職歴が不自然でないか
- 法令遵守して生活しているか
言い換えると、「現在の働き方の適正性」と「過去の生活・納税履歴」を重点的に見られるということです。
②更新時期:いつから申請できる?どれくらい時間がかかる?
就労ビザ更新は、在留期限の3か月前から申請可能です。
一般的な審査期間は、
- 普通の更新:2週間〜1か月
- 転職後の初回更新:1〜2か月
- 納税・社保に問題があるケース:2〜3か月以上
と、ケースによって大きく変わります。
そのため、在留期限の1か月前の申請は遅く、できれば2〜3か月前に動き始めたほうが安全です。
実務上、「この書類がないため判断できない」という理由で不許可になる例も珍しくありません。
時間に余裕があればしっかり準備できた書類も、慌てて申請の準備をしたために補強書類を出せずに許可が下りなかったという事後相談もよくいただきます。
このようなことが無いように事前準備はしっかりと進めていきましょう。
③更新に必要な書類の全体像(本人+会社)
更新では、以下のように「本人書類/会社書類」の双方が必要です。
必要書類についてはカテゴリー別で異なります。
≪本人書類≫
- パスポート
- 在留カード
- 住民税の納税証明書
- 年金の納付状況が分かる書類
- 健康保険の加入証明(勤務形態により異なる)
- 給与明細(必要に応じて) など
≪会社書類≫
- 在職証明書
- 源泉徴収簿
- 直近の決算報告書
- 法人税納税証明書
- 会社概要説明書
- 勤務内容説明書 など
書類量が多いため、「更新は簡単」と侮ると、会社側の書類不備で遅延→不許可というケースが実際に起きています。
そのため、更新時期はいつなのか、をしっかりと把握し、事前準備をしっかりとしておきましょう。
▼カテゴリーについての詳細については下記コラムをご覧ください。
就労ビザ申請における「カテゴリー」とは?カテゴリー1〜4の違い・必要書類・審査への影響を行政書士が徹底解説!
④なぜ更新で不許可が多いのか?
その理由は、更新=「過去1〜3年の総点検」となるためです。
初回申請は「これからどう働くか」が中心ですが、更新は「これまで適切に働き、義務を果たしてきたか」という過去が問われます。
そのため、
- 転職歴
- 給与の増減
- 社会保険の加入状況
- 納税状況
- 会社の経営状態
など、総合的にチェックが入ります。
【2】就労ビザ更新が“過去の実績”を重視する理由を徹底解説
更新で最も重要なのがこのポイントです。
就労ビザ更新はこれからの「未来」ではなくこれまでの「過去の履歴」を中心に審査されます。
なぜなら、日本の入管制度は、在留期間中に「適切な就労と生活をしていたかどうかで、次の滞在を認めるか判断する」という考え方をとっているからです。
①在留資格と業務内容の一致が必須
たとえば、
- 技術・人文知識・国際業務 → 事務、翻訳、エンジニア、マーケティングなど専門業務
- 技能 → 料理人など一定技能が必要な業務
このように、ビザごとに認められる仕事内容は決まっています。
これらの内容が一致していないと更新の際、不許可リスクがかなり高まってしまいます。
実務では、次のようなケースが危険です。
- エンジニアのはずが倉庫作業をしている
- 事務職のはずが清掃・調理をしている
- 料理人のはずがホール接客中心になっている
- 営業職のはずが配送をしている
これらは入管がもっとも警戒するポイントです。もし、上記のようなケースに該当する場合は、更新時の許可がおりませんので注意してください。
②会社の経営状況が審査に影響する理由
更新では必ず、会社の
- 決算書
- 法人税納付状況
- 事業規模(従業員数・売上など)
が確認されます。
もし会社の業績が不安定なら、「今後も安定して雇用を継続できるのか?」という点で不許可リスクが高まります。
特に以下は注意です。
- 直近の決算が赤字続き
- 社会保険に適切に加入させていない
- 外国人雇用の体制が整っていない
などといった、中には「本人は問題ないのに会社側の要件で不許可」というケースもありますので注意しましょう。
③給与の安定性について
入管は給与の安定性を見るため、
- 給与額
- 支給日
- 残業の多さ
など月ごとのバラつきなどを細かく確認します。
以下のようなケースは追加説明が必要です。
- 給与が急に減っている
- 平均給与と職務内容が見合っていない
- 会社の経営不振で給与遅延がある
給与水準は「日本人と同等以上」かどうかで判断されるため、「生活が不安定」と判断されれば、当然リスクになります。
【3】年金・社会保険・納税のチェック(就労ビザ更新の最重要ポイント)
就労ビザ更新で最も多い不許可理由は、年金・社会保険・住民税のいずれかに問題があるケースです。
この3つは入管が最も重視する項目で、1つでも不備があれば追加資料、場合によっては不許可につながります。
①住民税について
入管が必ず確認する書類として、
- 住民税課税証明書(所得の証明)
- 住民税納税証明書(未納の有無を確認)
ポイントは、「納税証明書に未納がないか」です。
未納・遅れ・分納があると、不許可リスクが高まってしまいます。
特に問題となるケースとしては、以下のパターンです。
- 納税が遅れた/分割払いをしている
- 本人が申告をしていない
- 引っ越し前の自治体に未納が残っている
- 課税額と収入の整合性が合わない
住民税は自治体ごとの管理のため、転居時の未納がもっとも見落とされやすいポイントなので必ず申請前に確認しましょう。
②健康保険(社会保険)加入状況の厳格化
会社員であれば、本来は社会保険(健康保険+厚生年金)へ加入していることが前提です。
注意が必要なケースは以下の通りです。
- 会社自体が社会保険に加入していない
- 本人が国民健康保険のまま
- 社保加入の時期が不自然に遅れている
- 給与額と保険料額が一致しない
入管は近年、「法令順守(コンプライアンス)」を重視しているため、社会保険の加入漏れは、年金未納と並ぶレベルのリスクになっています。
③年金未納は一番の不許可要因
年金は「加入義務 → 支払い義務」のため、未納は非常に重く扱われます。
不許可につながりやすい事例としては以下のパターンです。
- 国民年金を長期間未納
- 会社員なのに厚生年金に加入していない
- 加入履歴に空白期間がある
- 未納期間が1年以上
未納が長期にわたる場合、説明書を出しても説得力が弱くリカバリーが難しい領域になりますので注意してください。
④会社側のミスで本人が不許可になるケース
本人に問題がなくても、勤務先の状況によって更新が難しくなることがあります。
会社側に多い問題としては、以下のようなパターンがあります。
- 会社が社会保険に加入していない
- 源泉徴収を適切にしていない
- 会社側の税金が滞納
- 決算書・役員報酬・給与台帳に整合性がない
書類は会社から取得するため、本人にはコントロールできない点が多いのに、不許可の対象は本人という構造が最大の落とし穴です。
そのため、更新申請では、早めに会社側の書類を確認し、社保・源泉徴収・給与額の整合性をチェックすることが必須となります。
⑤払っていなかった場合の対処法
万が一、税金や年金を支払っていなかった場合は、
- 過去分を一括納付
- 証明書を取得
- 申請書類に理由と改善後の状況を記載
という流れで対応しましょう。
未納の放置が一番危険です。未納期間があっても、改善の意思と事実があれば許可される可能性があります。
状況説明についてご不安があれば迷わず専門家にご相談ください。
【4】転職・休職があった場合の注意点
就労ビザの更新審査では、過去に転職や休職があった場合、通常の更新より審査が厳しくなる傾向があります。
理由はシンプルで、入管は次の2点を重点的に確認するからです。
- 現在の仕事が、あなたの在留資格に合っているか
- 職歴の変化に不自然な点がないか
ここでは、転職・休職があった場合に必ず押さえるべき実務ポイントを詳しく解説します。
①転職した場合
転職した場合は、以下のポイントに注意しましょう。
≪重要ポイント≫
- 必ず「所属機関変更届」を提出しているか
- 新しい会社の業務内容がビザに合っているか
- 給与が著しく下がっていないか
- 雇用契約が安定しているか
転職届を出していなかった場合は、「在留状況が不良」と判断され、更新が厳しくなります。
~転職したら「就労資格証明書」の取得を推奨~
就労資格証明書とは、新しい職場での業務内容が「現在の就労ビザの範囲内で適法であることを証明する書類」です。
任意の書類になりますが取得していた方が更新時とても楽に手続きを進められます。
≪取得していないと起きるリスク≫
- 更新時に「業務内容の不一致」を疑われ、追加資料が増える
- 単純労働の可能性を指摘され、不許可につながる
- 書類の裏付けが弱くなり、審査が長期化
特に「エンジニア → 営業」「通訳 → 事務」など、職種のイメージが変わる転職の際は必須級です。
▼就労資格証明書についての詳細については下記コラムをご覧ください。
転職するとビザはどうなる?就労資格証明書が必要なケースとメリット・デメリットを徹底解説
典型的な危険パターンとして実務上、多くの相談があるのが以下の部分です。
- 転職後に在留資格の変更をしていない
- 退職→無職の期間が長い
- 異業種への転職(資格外活動と判断される可能性)
- アルバイト期間が長い
- 就労内容が書類と合っていない
入管は「履歴の空白」を非常に嫌います。履歴に1か月間くらいなら何とかなりますが、3カ月以上の空白があれば理由説明書が必要というレベルです。
このような点に該当する場合は、そのまま進めずにまずは専門家にご相談ください。
②休職があった場合
休職期間があったとしても、即不許可にはなりませんが、入管が注目するのは以下のポイントです。
- 休職理由(病気・会社都合など)
- 休職期間
- 給与支払いの有無
- 復帰後の業務内容
ただ単に半年近く働いていないと、更新は非常に厳しくなりますが、病気など正当な理由があれば問題ありません。
これらのポイントを合理的に説明する必要があり、診断書や会社の説明書を添付すると効果的です。
【5】更新が難しいパターン・不許可例
下記によくある、不許可事例を記載させていただきます。
【よくある不許可例】
①年金・社会保険未加入・未納がある
最も多いケース。未加入が長いほどリスクは高いです。
②会社の経営状況が悪い
- 売上激減
- 赤字続き
- 給与遅延
- 社会保険未加入
会社の信頼性が低いと、個人では対処が難しいレベルで不許可になることがあります。
③実際の仕事内容がビザに合っていない
例えば技人国ビザで、
- コンビニでレジ打ち
- 飲食店で接客中心
というような単純作業をしていた場合は、更新は難しくなる可能性が高まります。
④給与が低すぎる
年収が極端に低いと、「生活の安定性」がないと判断されます。
⑤休職・無職期間が長い
働いていない期間が長すぎると「ビザ目的の滞在」と評価されやすくなります。
これらに該当する場合でも、お一人おひとりの状況によっては許可が下りる可能性があります。詳しい状況については、専門家にご相談ください。
【まとめ】就労ビザ更新は「過去のすべて」が審査対象。準備次第で許可率は大きく変わる
就労ビザの更新は、初回許可よりも確実に厳しく、そして失敗しやすいのが実務の現実です。
理由はシンプルで、更新審査は「未来の予定」ではなく これまでの実績と義務履行状況 を基準に判断されるからです。
特に、
- 住民税の未納・遅れ
- 年金未納・加入漏れ
- 社会保険の不加入
- 転職歴・休職歴の説明不足
- 実務内容とビザの不一致
- 会社側の社保未加入・決算不良
などは、不許可リスクが一気に跳ね上がる典型例です。
また、本人は全く悪くなくても、会社側の書類不備で不許可となるのが更新申請の最大の落とし穴です。
提出書類の整合性、税金・年金の履歴、職務内容の一貫性など、一つひとつが審査に直結します。
しかし、裏を返せば、必要なチェックを事前に行い、問題点を補強すれば、ほとんどのケースは許可に持っていけるというのも最新の実務状況です。
更新の3か月前から準備できるため、早めに動くことが最大のリスク対策になります。
「何をそろえれば良いのか分からない」
「会社側の書類が不安」
という場合は、迷わず専門家に相談することでリスクを最小限に抑えることができます。
~不許可を避け、最短で安心して更新したい方へ~
就労ビザ更新は、1つの未納・1つの不一致 だけで不許可につながることがあります。
しかし適切な準備と正しい説明を行えば、ほとんどのケースは十分に許可を狙えます。
当事務所では、
- 住民税・年金・社保のチェック
- 転職歴・休職歴のリスク診断
- 会社側書類の整合性確認
- 追加説明書の作成
- 不許可リスクの事前洗い出し
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