自営業は永住ビザのハードルが高い?その理由とは?

「日本に長く住み、事業を安定して続けている。そろそろ永住ビザを取りたい」
――こうした相談を、私は行政書士として毎日のように受けます。

しかし、永住ビザ審査において 自営業(個人事業主)・フリーランス は、会社員より明確にハードルが高く設定されています。

理由はシンプルで、

  • 収入が「安定している」と客観的に判断しづらい
  • 会社員とは違い、売上・経費・所得の算出が人によってバラバラ
  • 帳簿や確定申告書の不備が多い
  • 「実態のある事業か」を詳細に見られる

などといった理由があるからです。
つまり自営業者の永住ビザは、

①事業の安定性
②経費処理の妥当性
③税務書類の透明性

この3点が極端に重視される申請です。
本記事では、行政書士として数百件以上の永住申請をサポートしてきた経験から、
自営業者・個人事業主特有の「審査項目」「注意点」「不許可パターン」「成功例」を網羅的に解説しますので是非参考にしてください!

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【1】必要な収入ラインと課税証明の見られ方

自営業者(個人事業主)が永住申請を行う場合、入管が最も重視するのが 「所得の安定性」と「税務処理の適正さ」 です。
給与所得者とは異なり、自営業者は売上の増減や経費計上の違いにより所得が大きく変動しやすいため、年ごとの収入状況を厳格にチェックされます。
以下では、永住審査で実際にどのような点が確認され、どこで不許可が発生しやすいのかを、実務レベルで詳しく解説します。

①個人事業主の収入は “売上” ではなく “所得” で評価される

給与所得者(会社員)の収入は「源泉徴収票の年収」で判断されますが、個人事業主は 確定申告書の「所得金額」 が基準になります。

■所得金額 = 売上 − 経費

つまり、どれだけ売上が大きくても、経費で利益を消していれば「収入が低い」と判断されます。

例:

売上:800万円
経費:600万円
所得:200万円 → 永住はかなり厳しい

永住ビザで最も重視されるのは「日本で自立して生活できるか」であり、事業規模の大きさではありません。
そのため売上を多く計上しつつ、経費を必要以上に膨らませているケースは審査で極めて不利 になりますので注意してください。

②永住申請の目安となる所得ラインは “最低300万円以上×過去5年間”

個人事業主は原則として過去5年の安定性を見られます。

理由は以下の通り。

  • 収入の変動幅が大きい
  • 経費で利益を調整できてしまう
  • 事業の持続性が読み取りにくい

といった点があるからです。

実務上の目安(最低ライン)

  • 5年連続で所得300万円以上
  • 世帯年収ではなく 本人所得で300万円以上 が望ましい
  • 扶養家族が多い場合は+70万が必要(例:子2人なら350~400万円が現実的)

これらのポイントを満たしている場合は収入要件については問題ありません。

入管が特に重視するポイント

  • 「300万円を下回る年が1年でもあるか」
  • 「5年の平均所得が安定しているか」
  • 「事業の継続が見込めるか(売上推移、内容の一貫性)」

1年でもガクッと所得が落ちていると、それだけで永住が難しくなる ため、5年連続で黒字かつ安定した所得を残すことが必須です。

③確定申告をしていない場合は永住申請が“不可”

永住審査では「適切な納税」と「社会保険加入」の履歴が非常に重視されます。
個人事業主は毎年2〜3月に 確定申告を行い、その内容がその年の「所得」として確定 します。

永住審査では、この確定申告書が唯一の収入証明になるため、「確定申告していない=収入がゼロ=納税義務を果たしていない」という扱いになってしまいます。

よくある誤解として

「後から3年分まとめて確定申告すれば大丈夫ですよね?」

という、ご相談をいただきますが大丈夫ではありません。永住はほぼ100%不許可になります。

理由は以下のとおりです。

  • 税務署は遅れても受理しますが、入管は“適正な時期に納税していた事実”を重視するため
  • 過年度分をまとめて申告しても、永住審査では「未申告期間=無収入・納税義務不履行」とみなされるため
  • 一度該当年が不適正だと、そこから5年は回復が難しくなるため

つまり、確定申告をしていない期間があれば、永住申請は事実上不可能と考えるべきです。
永住は「過去の記録」が全て証拠として残ります。後から整えても「過去の未履行」は消えないため、確定申告は毎年期限内に必ず行う必要がありますので注意しましょう。

④課税証明書は “5年分を横並びで” 評価される

永住申請では、個人事業主は 市区町村が発行する課税証明書(課税・所得証明書)5年分を提出します。
入管はこの5年分をチェックします。

▼チェックされるポイント

  • 所得が毎年安定しているか
  • 300万円を下回る年がないか
  • 所得が毎年上昇または維持しているか
  • 事業の内容・規模が継続しているか
  • 扶養家族の人数に対して所得は十分か

▼特に問題視される例

  • 開業初年度だけ極端に低い
  • ある年だけ赤字または0円
  • 所得の急落(300万円→150万円など)
  • 経費を増やしすぎて所得が見かけ上小さくなっている
  • 扶養家族が多いのに所得が低い

これから永住を目指している場合は、直近5年間、これらのポイントを満たしていることが重要ですのでしっかりと確認していきましょう。

⑤所得を“実際より多く申告する”のは絶対にNG(虚偽申告)

永住対策のために、

  • 家事按分を減らす
  • 経費を削る
  • 売上を調整する

などの“節税対策の修正”は問題ありませんが、

  • 架空の売上
  • 経費の過少申告
  • 所得の水増し

などは 虚偽申告=不法行為 となり、永住どころか 在留資格自体に重大な影響 が出ます。

永住申請では、税務署の申告内容・課税証明書・銀行の入金記録まで整合性が見られるため、不自然な申告変更はすぐにバレてしまいます。
永住を目指している場合は、このようなことはしないように注意しましょう。

⑥確定申告の内容は “所得税だけ” では判断されない

永住審査では、

  • 住民税(市県民税)
  • 国民健康保険
  • 国民年金(または厚生年金)

これらの納付状況もすべて照合されます。
所得が高くても、保険料の未納があれば不許可 となるため、収入と同じくらい社会保険の継続加入・納付が重要です。
自営業者は住民税を自分で納付するため、滞納が起きやすいので注意しましょう。

⑦個人事業主の収入要件まとめ

項目評価基準(目安)
所得金額5年連続300万円以上
確定申告毎年期限内に必ず実施(後申告は不可)
課税証明書5年分が安定していること
社会保険年金・健康保険の未納がない(あったらアウト)
経費不自然な調整は厳禁(見破られる)
扶養家族多いほど所得の要求が上がる

▼永住ビザの基本的な要件については下記コラムをご覧ください。
【完全版】永住ビザ申請の全て:要件・必要書類・審査ポイント・不許可回避まで総まとめを徹底解説

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【2】経費の扱いと所得の出し方 ― 永住ビザ評価を大きく左右するポイント

自営業の永住審査で最も落とし穴になるのが経費の計上です。
経費の内訳については必須ではありませんが、

「経費を多く計上して所得を低く見せている」

など明らかに収入基盤が弱いと判断される場合は、経費の内容・申告の実態を裏付ける説明を求められたり、補助資料の提出を促されたりすることがあります。

■過度な経費は「所得圧縮」とみなされる

審査官は、「この経費、本当に必要?」という視点で見ています。

【特に注意される経費】

  • 家事按分(家賃・光熱費)
  • 交際費
  • 車両関連費
  • 通信費
  • 旅費
  • 家族への外注(実質的には個人的支出) など

これらが多いと、所得が少なく見えるため不許可の原因に直結します。

■税務上の正しさ」と「永住審査の評価」は異なる

税務署:経費として認められるかどうか
入管:生活が安定しているかどうか

同じ経費でも、税務上は問題なくても、入管ではマイナス評価になることが多いのが現状です。

■所得の出し方(実務的アドバイス)

  • 家事按分は実態に即した数値に(例:家賃の20%など)
  • 交際費は事業に関連したものだけ記録
  • 不明瞭な経費は削除する
  • 「節税目的の経費」は減らす

経費が多すぎて所得が低く出ているケースは不許可の可能性が高くなってしまうので注意してください。
永住申請を考え始めたその時から、“永住用の申告” を意識して決算を組むことが成功率を大きく上げます。

【3】帳簿・確定申告書の整え方 ― 入管が確認する「透明性」の作り方

自営業者の永住申請で、入管は次の点を非常に細かく審査します。

①帳簿が付けられているか(会計ソフト推奨)

紙の領収書のみで申請する人もいますが、これは最も危険です。
入管では、「帳簿をつけている=事業の透明性が高い」と評価されます。

クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード等)は、永住申請でも高評価です。

②確定申告書の整合性

次の書類セットすべてを提出します。

  • 確定申告書B(一式)
  • 青色申告決算書(または収支内訳書)
  • 税務署の受付印または電子申告の控え
  • 住民税課税証明書(所得額)
  • 住民税納税証明書(完納を確認)

これらの金額が完全に一致しているかが最重要。
1円でもズレていると、「帳簿が不正確」「申告に不備がある」と判断され、不許可要因になります。
これらの書類については申請前に、しっかりと確認しましょう。

▼基本的に必要な書類については下記コラムをご覧下さい!
【保存版】永住ビザ申請に必要な書類一覧とスムーズに揃えるコツ【理由書作成のポイント・不許可事例付き】

【4】不許可が多い典型例 ― 自営業者特有の落とし穴

以下は、実際の相談で特に多いパターンです。

所得が年ごとにバラついている

1年目:180万円
2年目:420万円
3年目:260万円

→ このような波のある所得は評価されにくく、5年連続が重要です。

許認可が必要な業種で許可を取っていない

これは事業を行う上で非常に重要なので、必ず許可を取得してから事業を始めてください。

帳簿が存在せず、確定申告書に不自然な点がある

  • 帳簿なし
  • 現金売上の記録が曖昧
  • 経費の領収書が整理されていない

→ 「事業の実態不明」と判断されてしまいます。

納税状況に遅延・滞納がある

永住審査は、1日でも滞納したら難しくなりますので日ごろから期日は守りましょう。

事業の実態がわからない(業務内容が曖昧)

  • サービス内容が不明確
  • 在宅ワーク系で証拠資料が不足
  • 取引先が限定的で説明できない

→理由書で正しく説明しないと不許可確率が跳ね上がります。

上記に加えて、提出書類に不備や矛盾があると追加資料を求められたり、いきなり不許可となってしまう可能性が高まりますので注意しましょう。
書類の作成についてご不安がありましたら、迷わず専門家にご相談ください。

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【5】個人事業主の永住許可事例(モデルケース)

ここからは、実際にあった相談を元にした “安全な範囲のモデルケース” を紹介します。

■モデルケース①:飲食店経営(40代男性・中国籍)

【年間所得】

5年前:330万円
4年前:310万円
3年前:380万円
2年前:360万円
直近:410万円

【ポイント】

  • 帳簿が整っていた
  • 仕入れ・経費の証拠資料を完全に保管
  • 従業員1名を雇用し、事業の安定性が高かった

→ 永住許可

■モデルケース②:ITフリーランス(30代・インド籍)

【課題】

収入は高いが経費が大きく所得が低い状態
課税証明書が年により大きく変動(310万→570万→310万→710万→350万)

【対応】

  • 不要な経費を削減
  • 契約書・請求書・入金明細を揃えて透明性を確保
  • 所得の変動理由を詳細に説明

→永住許可

■モデルケース③:美容サロン経営(フィリピン籍・女性)

【課題】

所得が基準ギリギリ

【対応】

  • 写真・広告・予約システムのデータで事業の実態を確認
  • 過去の経費計算を修正して、所得割合の向上

→永住許可

【6】まとめ ― 自営業者の永住ビザは「証拠の積み上げ」がすべて

自営業・個人事業主の永住ビザは、会社員と比べて明確に審査が厳しい分野です。
しかしその本質はとてもシンプルで、次の3つを一貫して証明できるかどうかに集約されます。

所得の安定(最低5年・300万円以上)

永住審査で最も重視されるのは “売上” ではなく “所得”。
経費の付け方ひとつで所得が変動するため、毎年安定して所得を残せているかが核心です。

  • 5年連続で所得300万円以上
  • 黒字を維持
  • 扶養家族が多い場合は+70万の所得が必要

このラインを満たせているかが第一関門になります。

経費処理・申告内容の透明性

永住審査では、税務上の正しさ以上に 「実態のある事業か」「生活が安定しているか」 が見られます。

  • 家事按分の過大計上
  • 交際費・車両費・旅費の多さ
  • 申告内容と帳簿の整合性

「所得圧縮」と判断されると、追加書類を求められたり、不許可になってしまう可能性が高まります。
“永住用の決算・申告” が必要だという点を忘れてはいけません。

書類の整合性・事業の実態資料の充実

個人事業主の永住は、「どれだけ証拠を揃えられるか」が勝負です。

  • 帳簿(会計ソフト推奨)
  • 確定申告書一式
  • 課税証明5年分
  • 納税証明(住民税・国保・年金)
  • 契約書・請求書・入金記録
  • 事業の写真や広告・サイト・SNS

これらを一貫した形で提出できれば、審査官が「事業の安定」を確認しやすくなり、許可に近づきます。

結論として、自営業者の永住は“準備力”で決まります。

永住審査は、『現在の収入だけでなく、過去5年間の記録がすべて審査対象』という極めて特殊な在留資格です。
逆にいえば、要件を正しく理解し、数字と証拠をしっかり積み上げていけば、自営業者でも十分に永住を取得できます。

「自営業だから永住は無理…」

そう思う必要はありません。正しい準備をすれば、必ず道は開けます!

自営業の永住ビザは、書類の整え方ひとつで「許可」と「不許可」が180度変わります。

私はこれまで、売上は十分なのに、経費や帳簿のせいで不許可になってしまった、、というご相談を何度も受けてきました。
このような場合、申告内容を整えただけで一気に許可になる場合も多くあります。

個人事業主の永住申請は、「収入・経費・税務・社会保険・事業証明」などが複雑に絡み合う、入管手続きの中でも最難関の部類です。

「これで足りるのか?」
「この経費は問題ない?」
「所得が不安定だけど対策はできる?」

といった疑問が1つでもある場合や

  • 経費が多く所得が低い
  • 所得が年により大きく変動している
  • 帳簿が不十分 など

というような場合は、自己判断で申請すると不許可リスクが非常に高いので、確実に許可を取りたい場合は必ず専門家に相談してください。

初回の無料相談では

  • 所得推移は永住基準をクリアしているか
  • 経費計上や帳簿に問題がないか
  • 今のまま申請すると不許可の可能性があるか
  • 許可を取るために今すぐ修正できるポイント

これらを “審査官の視点” から具体的に診断します。

「今の収入で永住はいけるのか?」
「どの年度がネックになっているのか?」

が明確になるため、最短で永住許可に近づけます。

永住は人生の転機です。不安なまま提出するのではなく、確実に許可を目指しませんか?

当事務所では許可が取れるかどうかの事前診断を無料で実施しております。
お客様の状況をお伺いし、課税証明・確定申告書を拝見すれば、修正すべき点から永住の可能性がどれくらいか、すぐに診断できますのでまずはお気軽にご相談ください。

© ひらま行政書士事務所 / 在留資格・帰化申請サポート

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▼永住ビザについての基本解説は下記コラムをご覧ください。
【完全版】永住ビザ申請の全て:要件・必要書類・審査ポイント・不許可回避まで総まとめを徹底解説

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