【1】そもそも入管は「会社の何を」審査しているのか?
「赤字だからダメなのでは?」という不安はもっともですが、入管審査は決算の良し悪しを評価しているわけではありません。
入管が見ているのは、決算書を通じて次の3点を読み取ることです。
- この会社は来年も存在しているか(事業の継続性)
- 外国人に給料を払い続けられるか(給与支払能力)
- 事業として実態があり、拡大または維持されているか(事業の安定性)
そのため、審査官は単純な損益や企業の大小を見ているわけではなく、「安定性」を見ています。
特に見られているポイントは以下です。
- 売上の推移(前年対比)
- 営業損失の原因(販管費か、原価か)
- 貸借対照表の純資産
- 現預金残高
- 借入金の状況
- 人件費の割合 など。
つまり、
「なぜ赤字なのか」
「赤字でも会社は回っているのか」
という点がチェックされるため、この視点を踏まえて説明すれば、安全性を示す有力な資料に変わります。
【2】赤字でも問題にならない会社の特徴
実務上、赤字でも問題なく許可が出ている会社には以下のような明確な共通点があります。
■売上が落ちていない赤字
売上は維持または増加しているが、先行投資などで赤字。
といったような場合は「攻めの赤字」と評価されやすいです。
■減価償却費・広告費・開発費が増えている赤字
損益上は赤字でも、キャッシュは減っていないケース。
このポイントに関しては入管は非常によく見ています。
■現預金が十分にある
赤字でも、口座残高が厚ければ給与支払能力に疑問は持たれにくくなります。
■繰越利益剰余金がある
過去黒字が続いており、ちゃんと蓄積がある会社は、単年度赤字はしっかりと理由を説明すればあまり問題視されません。
■すでに受注・契約が確定している
「来期黒字化の根拠」が見えているような場合は、強いと評価されやすいです。
これらの共通点は、「この会社すぐ潰れないな」と審査官に直感的に分かってもらえる状態であることです。
【3】不許可になりやすい会社の特徴
不許可になりやすいのは単なる「赤字会社」ではなく、「説明がちゃんとできない会社」です。
特に危険なのは、
- 売上が年々減少している
- 現預金が極端に少ない(数十万円レベル)
- 債務超過
- 借入過多で返済原資が見えない
- 社会保険料・税金の未納や遅延
などのような状態です。
入管は「この会社、本当に雇用を維持できるのか?」という視点で見ているため、このような状態だと審査は少々厳しくなってしまいます。
\赤字企業の申請は「通常の就労ビザ申請」とは全く別物です/
赤字企業の申請は、書類を揃えるだけでは許可は出ません。
実務では、
「理由書の構成」
「補強資料の出し方」
「事業計画書の作り方」
「財務状況の見せ方」
これらを赤字企業専用のロジックで組み立てる必要があります。
この構成を知らずに通常の申請書類で出してしまい、
追加資料や審査長期化になってしまうケースは少なくありません。
当事務所では、赤字企業の申請について
「どの構成で書類を組み立てるべきか」を具体的にご案内しております。
【4】入管に「問題ない会社」であることを伝える方法
赤字企業の申請で結果を分けるのは、決算書の数字そのものではありません。
「その数字を、どう説明し、どう裏付けるか」ということが重要なポイントとなります。
上述しましたが入管審査官は、赤字決算の会社を見るとき、次の疑問を持ちます。
- なぜ赤字なのか?
- 本当に来期は大丈夫なのか?
- この会社は給与を払い続けられるのか?
- なぜこのタイミングで外国人を雇うのか?
この4つの疑問に、数字と資料で順番通りに答えることが、赤字企業が就労ビザを申請する際の重要なポイントです。
≪1≫理由書・事業説明の「正しいストーリー構成」
赤字企業の理由書は、次の順番で組み立てる必要があります。
①赤字の原因(過去)
決算書のどの数字が、なぜ赤字につながったのか
(例:減価償却費増加、広告投資、開発費 など)
②現在の状況(現在)
売上推移、受注状況、試算表、現預金残高
③改善の根拠(未来)
来期売上の見込み、その根拠資料
この流れが崩れると、どれだけ文章を書いても審査官には伝わりにくくなってしまうので注意してください。
≪2≫セットで出すべき補強資料について
企業のカテゴリーにもよりますが、特にカテゴリー3の企業が赤字の場合、理由書ともに「問題ない会社」であるということを裏付ける資料をセットで提出する必要があります。
特に有効な資料は以下です。
- 直近数か月の試算表(黒字化・回復傾向の証明)
- 受注書・契約書・発注書
- 銀行の残高証明書
- 借入返済予定表(正常返済の証明)
- 増資や資金調達の資料
- 親会社・スポンサーからの支援書面 など。
これらの資料に関しては「あると良い資料」ではなく、審査を通常レベルに戻すために積極的に用意をしていきましょう。
≪3≫給与支払い能力の示し方
入管が懸念している点としては、「この外国人が給料未払いになることはないか」という点です。
そのため、次の2点を極めて重視します。
- 現在の現預金残高
- 今後の入金予定の確実性
つまり、決算書よりも、口座残高と受注書の方が効くという場面が実務では多々あります。
≪4≫事業計画書について
分厚い事業計画書は不要ですが、数字の根拠がある計画は非常に有効ですので、最低限、次の内容は記載しましょう。
- 来期売上・利益の見込み(簡潔な表)
- その数字の根拠(どの取引先からいくら入るか)
- コスト削減や改善策(具体的な金額)
ここに契約書や発注書が紐づくと、一気に説得力が増します。
最近は、赤字企業に関しては通常の審査も厳しく見られる傾向にあるため、
公認会計士や中小企業診断士など第三者の専門家による「経営改善計画書」や「事業継続性に関する意見書」を添付すると、説得力を高めることができますので推奨させていただきます。
特に、
- 2期連続赤字
- 債務超過
- 増資・DES・資金調達を行っている
- 財務状況の説明が複雑
等のような場合は、公認会計士や中小企業診断士などに事業計画書の評価をしてもらい意見書をもらったほうが安全となります。
赤字企業の申請は、このマイナススタートを、資料とロジックでいかにゼロ地点まで戻すことができるか、という点がポイントとなります。
逆に、この点をしっかりと対策をすることができれば、赤字であること自体は大きな問題にはなりませんので安心してください。
【5】赤字企業が申請前に確認すべきセルフチェック
以下は、赤字企業の申請で実際に審査が重くなりやすいポイントです。
3つ以上当てはまる場合は、通常よりも慎重な書類構成が必要な状態ですので申請前に確認してください。
- □現預金残高が月商の1~2か月分未満しかない
- □2期連続赤字になっている
- □債務超過になっている
- □借入金の返済原資が見えにくい
- □税金・社会保険の支払いに遅れがある
- □直近の試算表をすぐに出せない
- □繰越利益剰余金がほとんどない
- □売上が前年より下がっている
- □来期売上の見込みを資料で示せない
- □受注書・契約書・発注書などの裏付け資料がない
- □赤字の理由を決算書の数字で説明できない
上記の項目に3つ以上当てはまる場合、
そのままの状態で通常の申請書類のみで申請すると、高確率で追加資料や理由書補強の対象になります。
そのため、最初から「事業計画書」等の書類を準備することにより、審査期間の短縮や許可率を向上させることができます。
外国人の雇用については、企業側にとっても事業の進み方等にも大きくかかわってくることもあると思いますので、極力審査期間については短くしてスムーズに雇い入れたいことでしょう。
これらの状況を事前に把握しておくことができれば事前に対策ができますので、追加資料等を求められる可能性を減らすことができます。
【まとめ】赤字=不許可ではありません。
ここまでお読みいただいたとおり、技術・人文知識・国際業務ビザの審査において、入管が見ているのは「黒字か赤字か」ではなく、一貫して、「会社の安定性」です。
多くの赤字企業については、この「安定性」を決算書の数字だけでは伝えきれないため、
- 理由書の構成
- 補強資料の出し方
- 事業計画書の作り方
- 財務状況の見せ方
によって、審査の印象が大きく変わります。
実務上、許可が出ている赤字企業は財務が良いわけではなく、
「赤字でも問題ない会社であること」
を、審査官に論理的に理解させる書類構成ができているという共通点があります。
逆に言えば、赤字企業の申請は通常の申請とは全く別物であり、「いつもの書類」に少し説明を足すだけでは不十分です。
赤字というマイナスの状態から、資料とロジックでゼロ地点まで戻す作業が許可を取るための重要なポイントとなります。
~赤字企業の就労ビザ申請で迷ったら、申請前の確認だけでもご相談ください~
当事務所では、赤字決算・債務超過を含む企業様の就労ビザ申請を数多く取り扱っています。
- 今の決算内容で申請して問題ないかの判断
- 事業計画書や補強資料が必要な状態かどうかの見立て
- 理由書の構成や説明ロジックの整理
- 審査が重くなるリスクを踏まえた事前診断
など、「申請してから追加資料や長期審査で困らないためのサポート」を重視しています。
「この決算内容で本当に申請して大丈夫か?」
「どこまで資料を準備すれば審査が通常レベルに戻るのか?」
といった事前確認だけでも対応可能です。
赤字企業の申請は、書類を出してから対応するのではなく、出す前の準備で結果がほぼ決まる申請です。
不安がある段階で、そのまま申請を進めるのではなく、一度専門家にご相談ください。
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