【1】そもそも短期滞在ビザとは?配偶者ビザと何が違う?
短期滞在とは、観光・親族訪問・商用など、短期間の滞在だけを許可する在留資格です。
【短期滞在で認められる主な活動】
- 観光旅行
- 親族訪問
- 会議参加、商談
- 冠婚葬祭
【短期滞在で禁止されていること】
- 長期滞在を前提とした活動
- 収入を伴う活動(就労)
- 中長期在留資格への“変更を前提とした来日”
一方、配偶者ビザ(日本人の配偶者等)は、日本人の配偶者として日本で安定的に生活するための長期在留資格です。
そのため、短期滞在と配偶者ビザはそもそも“目的が全く違う”ため、入管としては 短期滞在からの変更を原則認めていません。
【2】なぜ短期滞在から配偶者ビザに変更できないのか?
入管が短期滞在からの変更を原則禁止している理由は、主に以下の3つです。
理由①:短期滞在は「一時滞在」のため
短期滞在は90日以内の短期訪問を想定しています。
そのため、長期在留への変更を前提に来日すること自体が制度の趣旨に反するとされます。
理由②:不正滞在のリスクが高まるため
“結婚ビザ目当ての短期入国”を防ぐため、変更を厳格にしています。
理由③:本来は「認定証明書」で呼び寄せるべきだから
海外に住む外国人配偶者を日本へ呼び寄せる場合、正しい手続きは 在留資格認定証明書交付申請(COE) です。
日本人が先に申請し、配偶者はその証明書を使ってビザを取得して来日します。
そのため入管は、「短期滞在で来て、そのまま配偶者ビザに変更する」のは正規ルートではありませんと考えています。
これらの理由が短期滞在ビザから中長期の在留資格への変更を原則として禁止している理由となります。
【3】短期滞在から配偶者ビザへの変更は可能?|「やむを得ない特別の事情」とは?
≪1≫【例外的に変更可となる条件】
入管法の運用上、以下のような場合、「やむを得ない特別な事情」として変更が認められることがあります。
▼やむを得ない特別な事情(典型例)は以下の通りです。
①婚姻の成立または婚姻の実態がある場合
このケースが実務上でも一番多い状況とります。
- 短期滞在中に結婚した
- すでに共同生活を開始している
といった場合は、特別な事情として認められるケースがあります。
ただし、ただ単に「結婚しました。帰りたくないです」では許可をもらうことは難しいので注意してください。
入管が納得できるように、
- なぜ帰国して正規ルートを使わなかったのか
- なぜ今、日本で申請する必要があるのか
といった理由を論理的に説明する必要があります。
②在留中に在留資格認定証明書が交付された場合
すでに海外呼び寄せの手続きを進めており、その結果が短期滞在中に出たケース。
この場合は、入管が「すでに審査済み」 と判断するため変更許可がされやすくなります。
③妊娠・出産・子供に関する事情
母体・胎児の健康上、日本での出産が必要な場合や子供がまだ幼い状況で親の養育が必要な場合等が該当します。
健康状態に関する事情については、医師の診断書があればより強力です。
④人道上の特別配慮が必要な事情
- 病気で日本で治療する必要がある
- 介護が必要
- 戦争等で飛行機が飛ばない
など、命・生活に重大な影響があるケース。
これらの場合は、特別な事情として短期滞在ビザからの変更を認められる可能性が高いケースです。
≪2≫事前相談が許可か不許可の分岐点
短期滞在ビザから配偶者ビザへ変更することは、本来「やむを得ない特別な事情」がある場合にしか認められません。
この「やむを得ない特別な事情」についての判断は入管の場所によって異なり、東京の入管(永住審査部門)では事前に変更を認めてもらうための事前交渉と、変更理由を文書で明確に説明する必要があります。
短期滞在からの変更が認められやすくなるパターンは大きく2つです。
【パターン1】永住審査部門への事前相談で“受理の可否”を確認する方法
申請前に書類一式を整え、永住審査部門で事前相談を行い、「短期滞在のまま申請する必要性」を文書で説明し、入管側が申請の受理に同意した場合です。
この方法では、窓口で以下を確認されます。
- なぜ帰国してから手続きできないのか
- なぜ短期滞在中に緊急申請が必要なのか
- 日本で安定した婚姻生活を送れる根拠はあるか
- 偽装性の疑いを払拭できているか
これらを記載した説明書(理由書)の内容が不十分だと、他の必要書類を揃えていても受理されないことが多々あります。
無事に申請が入管に正式に受理されると、短期滞在ビザの在留期限から以下のいずれか早い日まで日本にいることが認められます。申請が受理されないと、下記の特例期間の適用はありませんので、注意が必要です。
- 配偶者ビザの審査結果が出るまで、または在留期間満了日から2か月間
この特例期間の間に許可されれば帰国せずに配偶者ビザが取得でき、日本に長期滞在が可能になります。
【パターン2】短期滞在中に「認定証明書」を取得して変更するルート
もう一つの手法は、短期滞在で来日してすぐに 在留資格認定証明書交付申請(COE) を行い、
短期滞在の90日以内に認定証明書が発行された場合、それを添付して在留資格変更許可申請を提出するという流れです。
この方法なら、一度帰国する必要がなく手続きを継続できます。
ただ、こちらの場合も「なぜ短期滞在中に配偶者ビザに変更したいのか」という説明と必要書類を揃えて入管の窓口で説明と交渉をする必要があります。
また、この場合は特例期間の対象にはならず在留期間の延長が認められません。在留期間内に許可がおりないと、日本から出国しなければなりません。審査の結果が90日以内に出るとは限らないことや、特に最近は審査期間の長期化傾向から見るとほぼ90日以内に結果が出る可能性はとても低いため、あまりお勧めではありません。
もちろん、「変更申請」が認められた場合は特例期間の対象となるため、在留期間が過ぎても2ヶ月は日本にいることができます。
【4】短期滞在から配偶者ビザ変更を成功させるための必要書類
必要書類は、通常の配偶者ビザよりも量・質ともに高い水準が求められます。
- 在留資格変更許可申請書
- 在留カード・パスポート
- 質問書
- 履歴書
- 身元保証書(日本人配偶者のもの)
- 外国機関発行の結婚証明書
- 夫婦のスナップ写真
- 戸籍謄本
- 住民税課税証明書・納税証明書 など
上記のような通常の必要書類に加えて、やむを得ない事情を説明する理由書がかなり重要となってきます。
この説明が、許可の可否を左右するといっても過言ではありませんので、書き方等に少しでも不安があれば迷わず専門家にご相談ください。
▼基本書類についての解説は下記コラムをご覧ください。
【最新版】配偶者ビザ申請に必要な書類一覧と注意点を解説!
【5】審査のポイント|入管が最も重視する“3つの軸”
短期滞在から変更を希望する場合、入管は次の3点を特に厳しく見ます。
①結婚の信ぴょう性
- 写真・会話履歴・渡航記録
- 婚姻までの経緯に不自然な点がないか
- 交際期間が短すぎないか など
②日本で安定して生活できるか(生計能力)
- 日本人側の収入が十分か
- 安定した雇用状況か
- 貯金があるか
- 住居が確保されているか など
①②については、通常の配偶者の審査でもチェックされますが、短期滞在からの変更の場合次のポイントが重要となります。
③やむを得ない事情の説得力
- 本当に特例として変更を認める必要があるか
- 帰国困難性が医師や公的資料で確認できるか
このポイントは、短期滞在からの変更特有の審査ポイントとなりますので、慎重に準備を進めてください。
▼配偶者ビザの基本要件の解説については、下記コラムをご覧ください。
国際結婚したら読むべき配偶者ビザ完全ガイド|手続きの流れ・必要書類・審査ポイント・不許可対策まで丸ごと解説
【6】短期滞在ビザから配偶者ビザへの変更の際に陥りやすい「誤解」と“不許可リスクの現実”
短期滞在からの配偶者ビザ変更は、通常の配偶者ビザより審査が厳格に行われます。
しかし、ネット上には誤った情報が氾濫しており、それを信じて動いてしまって“不受理”や“不許可”になるケースが後を絶ちません。
ここでは、特に相談が多い「よくある誤解」と、実務上頻発する「不許可の落とし穴」を解説します。
①よくある誤解|ネット情報だけで進める危険性
【誤解①】「結婚すれば短期滞在から必ず変更できる」→ × 完全な誤解です
結婚そのものは「事実関係」であり、“特別な事情(例外扱い)”にはなりません。
実際、結婚していても不受理になる事例は珍しくありません。事前準備を怠らないようにしましょう。
【誤解②】「SNSの写真やLINE履歴を大量に出せば通る」→ × 量より『信ぴょう性』です
入管が見ているのは、
- 交際経緯の整合性
- 客観的な証拠の信頼度
- 時系列の一貫性
であり、画像やメッセージ量ではありません。なぜ、短期滞在中に変更する必要があるのか、を具体的に説明する必要があります。
【誤解③】「友人が成功したので自分も大丈夫」→ × 例外審査は“完全な個別判断”です
短期滞在からの変更は本来“例外中の例外”です。
同じ国籍でも、同じ交際期間でも、同じ職業でも、ケースが違えば結果は全く変わります。
「他の人が通ったから安心」などということはありませんので注意してください。
上記のような誤解が不許可を招いてしまう可能性がありますので、ご不明点があればインターネットの情報だけでなく、直接入管に確認するか、専門家へのご相談をお勧め致します。
②不許可になりやすい典型例|特に注意すべきチェックリスト
短期滞在から配偶者ビザへ変更する場合、通常の配偶者ビザより審査が厳しく、次のようなケースは特に不許可リスクが高まります。
- 交際歴が極端に短い
- 生活費の計画や資金計画が曖昧
- 日本人側の収入が低く、安定性を説明できない
- 理由書の内容が抽象的で、審査官に伝わりにくい
- 医師の診断書や添付資料の内容が不十分
- 入管からの指示を正しく理解できていない
- 永住審査部門での事前相談で「受理が難しい」と判断された
これらはあくまで「不許可リスクを高める要因」であり、一つでも該当すれば審査が厳しくなる“危険サイン” です。
不安材料がある場合には、「正しい立証方法が分からない=そのままでは通らない」という点を理解した上で慎重に準備する必要があります。
【8】専門家に依頼したほうが良いケース
短期滞在ビザから配偶者ビザへの変更では、次のような方は特に専門家を入れた方が安全です。
- やむを得ない事情が複数あり、説明の優先順位が分からない
- 交際期間が短いが、どうしても日本での生活を早く始めたい
- 日本人側の収入が低い/転職後、間もない
- 認定申請にするか、直接変更にするか判断できない
- 永住部門での事前相談に自信がない
- 過去に不許可歴があり、理由書や証拠の組み立てに不安がある など
例外審査では、「どの順番で、何を、どう説明するか」=審査の通過率を大きく左右します。
そのため、書類の出来栄えは審査結果に大きな影響があります。
特に、特別審査(例外審査)は専門家による構成・理由書作成が全体の説得力を左右する ため、依頼するメリットは非常に大きいです。
【まとめ】短期滞在から配偶者ビザへの変更の成功には戦略が必要
短期滞在ビザ(観光・親族訪問など)から配偶者ビザへ変更する手続きは、ネットで見かけるほど簡単ではなく、原則は不可で、許可されるのは特例のケースのみです。
特に近年は入管の審査が厳格化しており、「結婚さえすれば通る」といった誤った情報を信じて進めると、
- 申請が窓口で受理すらされない(不受理)
- 在留期限切れ → オーバーステイの危険
といった重大なリスクが発生してしまいます。
また、例外審査では通常以上に、
①婚姻の信ぴょう性
②日本で生活できる生計能力
③帰国できない「特別な事情」の説明
④理由書の論理性
⑤証拠資料の整合性
が厳しくチェックされます。
とくに③の「特別の事情」の説明力は、許可の可否を左右する最重要ポイントです。
書類の“量”ではなく、「どう説明するか」「どの順番で立証するか」という“質”が可否に直結します。
短期滞在からの配偶者ビザ変更は、正しい戦略を取るか、誤った対応をするかで結果が180度変わる手続きです。
不安がある場合、できるだけ早い段階で専門家に相談し、適切なルートを選択することを強くお勧めします。
【申請が難しいと感じたら、手遅れになる前にご相談ください】
短期滞在からの配偶者ビザ変更は、失敗すると 「不受理」「即帰国」「不許可歴が残る」 など、今後の手続きにも悪影響が及ぶリスクがあります。
しかし、正しく状況を整理し、入管が納得する理由書の構成・証拠資料の設計・事前相談の戦略 を組み立てれば、許可が出る可能性を最大限に高めることができます。
当事務所では、
- 永住部門への事前相談サポート
- 特別審査に対応した理由書の作成
- 認定申請と変更申請のどちらが最適かの判断
- 不許可リスクの診断
- 申請書類の完全フルサポート
など、短期滞在→配偶者ビザ変更に特化した実務を行っています。
「帰国せずに申請したいが、可能かどうか判断してほしい」
「理由書の書き方が分からない」
「交際期間が短くて不安」
「受理されなかったらどうしよう…」
そのような方は、在留期限が切れる前にご相談ください。
短期滞在からの変更は、タイミングも戦略も極めて重要です。
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© ひらま行政書士事務所 / 在留資格・帰化申請サポート
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国際結婚したら読むべき配偶者ビザ完全ガイド|手続きの流れ・必要書類・審査ポイント・不許可対策まで丸ごと解説