【1】永住申請と帰化申請の違い
最初に永住申請と帰化申請の違いについて、表でまとめさせていただきます。
| 【永住申請】 | 【帰化申請】 | |
| 国籍 | 外国籍のまま | 日本国籍になる |
| 在留資格更新 | 不要(※在留カードの更新は必要) | 不要(日本国民になるため) |
| 選挙権 | なし | あり |
| パスポート | 外国籍のパスポート | 日本国籍パスポート |
| 申請の難易度 | 要件が明確で比較的進めやすい | 書類が膨大で、審査は裁量的 |
| 審査期間 | 1年半前後 | 1年前後 |
安心していただきたいのは、どちらの申請も「ルールを理解して正しく準備」すれば必ずゴールに近づけるということです。
ただし、帰化申請に関しては「裁量」が大きいため、人によって結果が大きく違う点には注意が必要です。
【2】永住権取得のメリット・デメリット
【メリット】
①安定した在留資格
更新不要で長期滞在が可能。ビザ更新の手間が大幅に減ります。(※在留カードの更新は必要です)
②就労制限がなくなる
在留資格に縛られず、どの職業でも働くことが可能です。
他の就労資格ではできなかった単純労働を含むどのような仕事にも就くことができます。日本での活動の幅と可能性を広げるという点で、非常に魅力的なメリットといえるでしょう。
③社会的信用度が上がる
永住ビザを取得することにより、他の外国人より社会的信用度が上がるため住宅ローンや事業者向けのローン等金融機関からの融資を受ける際、比較的審査がスムーズになることが多いです。
④在留特別許可が認められやすくなる
在留特別許可とは犯罪等により退去強制事由に該当する場合本来は日本を退去されるべきではあるものの法務大臣の裁決により特別に在留を認めるものです。
必ず認められるというわけではありませんが、万が一法に触れるような行為を行ってしまった場合にも永住ビザを取得していれば強制的に退去させられる可能性を下げることができると言えるでしょう。
⑤家族も永住者ビザや身分系ビザを取得しやすくなる
家族の本体者が永住ビザを取得すると、「家族滞在」ビザで滞在中の家族も永住に必要な年数が短縮されて同時に永住申請しやすくなります。
または、「永住者の配偶者」や「定住者」などの活動制限がない在留資格に変更できます。
【デメリット】
①選挙権がない
永住権を取得しても、国籍は変わらないため選挙権は持てません。
②日本のパスポートは持てない
こちらも選挙権同様に国籍は変わらないため母国のパスポートを利用することになります。
③高度専門職ビザの優遇措置がなくなる
高度専門職ビザには条件を満たした場合に親の帯同や家事使用人の帯同が認められるなどの優遇措置がありますが、永住ビザに変更した場合は優遇措置が認められなくなります。
【3】帰化申請のメリット・デメリット
帰化=日本国籍の取得
となります。そのため、今まで手間であった在留資格の更新手続きは不要となります。
つまり、日本人となることと同義ですので、法律上も日本人として扱われます。
帰化することによるメリット・デメリットは以下のとおり。
【メリット】
①日本戸籍を取得できる
帰化をすると日本の戸籍が編成されます。
日本戸籍を持つことにより、夫婦で同じ戸籍に入ることが可能となります。
日本国籍のない外国人は、日本で公的な手続きの際に母国の領事館から書類を取り寄せなければなりません。
帰化により日本国籍を取得することで、このような手間が無くなります。
②参政権を得られる
日本国民になることにより、選挙権・被選挙権が得られます。
選挙の際、投票に行ったり、本人も立候補することも可能となります。
③日本のパスポートが取得可能
帰化することで、日本のパスポートを持つことができます。
日本のパスポートはビザなしで渡航できる国や地域がとても多く、現状192か国にもおよび、世界で信頼度が高いと評価されています。
母国に帰る際にも短期であればビザが不要な場合がほとんどですでの、安心して母国への渡航もしていただけることでしょう。
④公務員や一部職業の制限がなくなる
日本国籍を取得することにより、国家公務員にもなることが可能となり就業の幅が大きく広がります。
⑤年金や保険、教育、福祉といった社会保障面で日本人と同様の権利を得られる
帰化により、日本人と同じく年金や保険、教育、福祉などの社会保障を受けられます。
例えば、事故や病気などで生活が立ち行かなくなってしまった場合、生活保護などを受ける権利が得られるのです。
これらの社会保障を受けられることは、今後日本で長期的に暮らしていくために大きなメリットとなることでしょう。
⑥社会的信用度の向上
帰化をすることにより、日本人としてみなされます。
そのため、住宅ローンや自動車ローンなどの審査も外国人としてではなく日本人と同様の審査されます。
注意点としては、帰化したからと言って審査が通りやすくなるわけはなく本人の状況によって審査されますので必ず融資が通るというわけではありません。
【デメリット】
①母国の国籍を失う
帰化をすることにより、母国の国籍は離脱するため、再び母国の国籍を取得したいという場合はかなり煩雑な手続きとなります。
②書類作成が膨大、審査期間が長い
帰化をする際の一番の関門が、書類の収集と作成です。
申請の際に提出する書類は、100ページ以上にもなり、手続きが大変なところがデメリットとして挙げられます。
また、この帰化申請は審査期間が1年以上と長いため、事前準備をしっかりとしておく必要があります。
帰化申請をするにあたり、一番不安や心残りを感じやすいのは「母国籍を完全に手放すこと」だと思います。
しかし帰化をすることにより得られる権利等のメリットを見れば十分メリットは感じられることでしょう。
将来的に日本での生活基盤を強めたい人にとって「帰化」は大きな安心材料になります。
【4】永住と帰化、どちらを選ぶべき?パターン別
【日本で長く働きたい人】→「永住」が安心。状況によっては「帰化」したほうがメリットが大きいことも。
【日本人配偶者がいる人】→家族と同じ国籍を望むなら「帰化」が安心
【国際的に母国でも活動したい人】→母国パスポートを維持できる「永住」が便利
【将来的にずっと日本で暮らしたい人】→「帰化」で安心感が得られる
今後母国に戻る予定もなく日本でずっと暮らしていきたいとお考えであれば、「帰化」をした方が社会保障面のことなども考えるとメリットが大きくなるでしょう。
【まとめ】「永住申請」や「帰化申請」は 自分で手続きできる?
結論から言えば、自分でも申請可能です。
書類の多さに圧倒されるかもしれませんが、役所や法務局の窓口で相談しながら準備を進めることもできます。
ただし、注意点があります。
永住申請:年収や納税に「一か所でも抜け」があると不許可になることがある
帰化申請:身上書や親族関係図を自分で正しく作れず、再提出を求められるケースが多い
「自分でもできなくはないが、途中で大きな壁に当たりやすい」というのが現実です。
不許可になってしまうと、再申請まで数年待たなければならないこともあります。そのため、「最初の申請でしっかり通す」ことが重要です。
当事務所のような専門家に相談すれば、
- 自分では気づきにくいリスクを事前にチェック
- 書類作成をスムーズにサポート
- 審査機関に伝わりやすい形で申請書類を仕上げる
といった安心感があります。
永住と帰化は、どちらも「日本で安定して暮らすための方法」です。
国籍を変えずに安定を得たい人→【永住】
日本国籍を取得して根を下ろしたい人→【帰化】
どちらを選んでも「正しく準備」すれば前進できますが、失敗した場合のダメージが大きいのも事実です。
「自分で挑戦するか、専門家に相談するか」。
安心と確実さを求めるなら、まずは専門家に相談することをおすすめします。
© ひらま行政書士事務所 / 在留資格・帰化申請サポート
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