【1】英語教師が取得する就労ビザは実質2種類
英語教師が取得する在留資格は、実務上ほぼ次の2つに集約されます。
- 在留資格「教育」
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」
重要なのは、職業名や肩書ではなく「所属機関の性質」で判断される点です。
同じ「英語を教える」仕事であっても、
- 公立中学校
- 民間英会話スクール
では、必要な在留資格が全く異なります。以下、それぞれ解説していきます。
【2】教育ビザとは?対象となる英語教師と取得要件
教育ビザは、日本の学校教育制度の一部として教育活動を行う人のための在留資格です。
判断基準は「学校教育法に基づく学校」かどうかです。教育ビザの対象となる主なケースは以下の通りです。
- 公立・私立の小学校・中学校・高校
- 特別支援学校
- 中高一貫校
- 教育委員会管轄のALT
- 学校教育法上認可されたインターナショナルスクール
というような機関で働く場合が対象となり、取得する際の基本的な要件は以下の通りです。
≪取得要件の基本≫
- 原則:4年制大学卒業(学士号)
- 教員免許または相当の教育経験
- 雇用主が学校・自治体・学校法人であること
これらが基本的な要件となりますが、実務上の注意点としては、以下に気を付けていきましょう。
≪実務上の注意点≫
- 民間英会話スクールは対象外
- フリーランス・業務委託は不可
- 副業は資格外活動許可が必須
「教育ビザがあるから、英語教育なら何でもできる」という理解は非常に危険ですので注意しましょう。
【3】技術・人文知識・国際業務(技人国)とは?【英語教師の場合】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)は民間企業等において、専門的・知的業務に従事する外国人向けの就労ビザです。
英語教師・語学教師の場合は、このうち主に
- 人文知識
- 国際業務
のいずれかに該当するケースがほとんどです。
①技人国が適用される英語教師の代表例
以下のような「民間主体」での語学教育は、原則として技人国ビザの対象になります。
- 民間英会話スクールの講師
- 学習塾・予備校の語学講師
- 企業向け語学研修・ビジネス英語講師
- 教材・カリキュラムの企画・開発担当
- 学校教育法に基づかない認可外インターナショナルスクール
同じ「英語を教える仕事」であっても、勤務先が学校教育法上の学校でない場合は、教育ビザではなく技人国ビザとなります。
②技人国ビザで英語教師になるための基本要件
技人国ビザでは、学歴または実務経験のいずれかを満たす必要があります。
英語教師の場合、判断は次の3パターンに分かれます。
日本または海外の大学を卒業し、「自分の母国語」を教えるケースでは、原則として専攻分野は問われません。
例えば、
- 理系学部卒業者が英会話スクールで英語講師をする
- 教育学以外の専攻でも、母国語指導であれば許可される
といったケースは、実務上よく見られます。ただし、海外大学卒業の場合は、
- 学位(学士)が正式に付与されているか
- 学校の教育レベルが大学相当か
といった点がチェックされる傾向があり、必要に応じて補足説明や資料提出が求められる点には注意が必要です。
母国語以外の言語を教える場合は、大学での専攻内容と職務内容との関連性が重要になります。
例えば、
- 英語を専攻した大学卒業者が英語講師になる
- 英語圏の大学を卒業している
- 授業・研究がすべて英語で行われていた
といった場合は、「十分な専門性・言語能力がある」と評価されやすくなります。
一方で、
- 専攻と業務内容が明らかに無関係
- 独学のみで語学力を身につけた
といったケースでは、なぜその学歴で語学指導ができるのかを資格証明書等を用いて論理的に説明できなければ、不許可リスクが高まりますので注意しましょう。
大学卒業の学歴がない場合でも、語学教師として3年以上の実務経験があれば申請は可能です。
この場合、
- 教える言語と同一言語での指導経験であること
- 正社員・契約社員など、継続的な就労経験であること
などが求められます。
また、実務経験は口頭説明では足りず、
- 在職証明書
- 職務内容が分かる資料(パンフレット、契約書など)
といった書類を提出して、客観的に証明する必要があります。
★最大の審査ポイント|学歴・職歴と業務内容の「関連性」★
技人国ビザにおける最大の審査ポイントは、「学歴(または職歴)と、実際に行う業務がどう結びつくか」が重要です。
単に、
- 英語が話せる
- ネイティブである
という理由だけでは足りず、「どのような専門知識」を「どのような形」で業務に活かすのかを、書類上で具体的に説明することが合否を左右します。
この説明が不十分な場合、条件を満たしていても不許可になるケースがあるため、英語教師の技人国申請では特に注意が必要です。
▼技人国ビザについての詳しい解説については下記のコラムをご覧ください
技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)とは?学歴と職務が不一致でも許可される要件・実務例を行政書士が徹底解説
【4】教育ビザと技人国ビザの違いについて
英語の先生として働く場合の教育ビザと技人国ビザの比較については以下の通りです。
| 項目 | 教育ビザ | 技人国ビザ |
|---|---|---|
| 所属先 | 学校教育法上の学校 | 民間企業 |
| 活動範囲 | 教育活動に限定 | 比較的広い |
| 転職 | 制限あり | 同一範囲なら柔軟 |
| フリーランス | 不可 | 可能 |
これらのように、それぞれ異なりますので申請する前に事前に確認をしておきましょう。
【5】フリーランス・業務委託で英語教師をする場合の就労ビザの考え方と注意点
英語教師・語学教師は、正社員でなく業務委託(フリーランス)として働く場合でも、業務内容が語学教育であれば「技術・人文知識・国際業務ビザ」の取得は可能です。
ただし、フリーランスの場合は雇用の安定性が低いと判断されやすく、正社員・契約社員に比べて審査は少々厳しめとなります。
①フリーランスで英語教師が厳しく見られる理由
入管が最も重視するのは、「安定した生活が継続できるか」という一点です。
業務委託契約では、
- 仕事量が減ると収入が不安定になる
- 生活維持のため資格外活動に及ぶリスクがある
と判断されやすいため、収入の安定性をどう立証するかが審査の核心になります。
フリーランスとして申請して許可を得るためには、以下が明確であることが重要です。
- 毎月の最低報酬額が保証されている
- 完全歩合制ではない
- 月額報酬の目安は合算で20万円以上
- 契約期間は1年以上(自動更新が望ましい)
フリーランスとして企業と契約する場合、1社で20万円に満たなくても複数社の固定報酬を合算して基準を満たせば問題ありません。
②複数社と契約する場合の注意点
フリーランス英語教師が、
- 語学スクール
- オンライン英会話
- 法人研修
など複数社と契約すること自体は可能です。
ただし、
- すべて語学教育業務であること
- 業務内容にブレがないこと
- 事務作業・営業・単純労働が含まれていないこと
といったことが重要で、業務内容が曖昧だと「技人国の範囲外」と判断されてしまうリスクがあります。
申請時には、業務委託契約書の内容がチェックされるため、少なくとも以下は明記されている必要があります。
業務委託契約書で最低限求められる記載事項
- 教える言語・業務内容
- 月額最低報酬額
- 契約期間・更新条件
- 報酬の支払方法
これらが不十分な場合、追加資料を求められ審査が長期化してしまったり、最悪の場合は不許可につながってしまいます。
フリーランス英語教師の就労ビザは、契約条件自体はクリアしているけど、書類の説明不足で不許可になってしまう、というケースが少なくありません。
申請時は「条件を満たしているか」だけでなく、しっかりとした説明が結果を左右してしまいます。
どう説明したらいいか、等書類作成の仕方などについて不安がある場合は専門家への相談が安全な選択肢となりますので一度ご相談してみてください。
【6】英語教師ビザでよくある不許可・トラブル事例
英語教師のビザ申請は、一見シンプルに見えて不許可が意外と多い分野でもあります。
よくある不許可理由①
- 学歴・専攻と業務内容の説明不足
- 卒業証明書は出している
しかし、どの知識をどう活かすのかが説明されていない、といった場合、「条件は満たしているのに説明不足で不許可」になってしまう可能性があります。
そのため、しっかりとした書類作成が重要となります。
よくある不許可理由②
- 実態と契約書の内容が合っていない
- 実際は講師業務のみ
- 契約書には「雑務・運営業務」も含まれている
このような場合、「単純労働が含まれる」と判断されるリスクがあります。この場合も、契約書の文言を修正してもらうなど雇用先との調整や単純労働ではないことの説明が重要となります。
よくある不許可理由③
- フリーランスで報酬の安定性が説明できない
- 完全歩合制
- 月収の目安が不明確
- 契約期間が短い
これらは、生活の安定性が立証できない典型例です。
これらのようなケースは、事前に対策をすれば全く問題なく対処できる問題となります。そのため、申請前にはしっかりとした準備が大切となってきますので時間には余裕を持って準備を進めていきましょう。
まとめ:英語教師のビザは「仕事内容」ではなく「制度理解」で差がつく
英語教師として日本で働く場合、「英語を教える」という仕事内容自体は同じでも、どの在留資格が適切かはケースごとに大きく異なります。
本記事で解説してきた通り、判断の軸は非常に明確です。
- 公立・私立の学校教育法上の学校で教える → 教育ビザ
- 民間の英会話スクール・語学研修・オンライン教育 → 技術・人文知識・国際業務ビザ
- フリーランス・業務委託 → 技人国ビザだが事前準備が重要
このように、「何を教えるか」よりも「どこで・どんな立場で教えるか」がビザ判断の決定打になります。
実務上、英語教師ビザで失敗しやすいポイントとして、特に多いのは次の3点です。
- 教育ビザと技人国ビザの取り違え
- 学歴・職歴と業務内容の説明不足
- フリーランス契約の安定性立証が不十分
これらは、要件そのものではなく、「説明の仕方」「書類の組み立て方」で結果が分かれるポイントです。
条件を満たしているつもりでも、
- 契約書の表現が曖昧
- 業務内容に専門性が見えない
- 収入の継続性が読み取れない
と判断されると、不許可や長期審査につながってしまう可能性があります。
実際、英語教師として働く場合のビザ申請については、自分で申請してもしっかりと許可は取れます。
ただし、英語教師の就労ビザは、
- ケースごとの判断が分かれやすい
- 入管の運用変更の影響を受けやすい
- 一度不許可になると、次回以降の申請で不利になる
という特徴があります。
特に、
- 教育ビザと技人国で迷っている
- フリーランス・業務委託で申請予定
- 学歴と業務内容の関連性に自信がない
こうした場合は、最初から専門家と一緒に進めていくことが結果的に一番の安全な近道になることも少なくありません。
~英語教師のビザで迷ったら、申請前の確認だけでもご相談ください~
当事務所では、英語教師・語学教師を含む就労ビザ申請を専門に取り扱っています。
- 教育ビザと技人国、どちらが適切かの判断
- フリーランス・業務委託契約のチェック
- 業務内容説明・理由書の作成サポート
- 不許可リスクを踏まえた事前診断
など、「申請してから後悔しないためのサポート」を重視しています。
「この契約内容で本当に通るのか?」
「教育ビザと技人国、どちらで出すべきか?」
といった事前相談だけでも対応可能です。
英語教師としてのキャリアを日本で安心してスタートさせるためにも、不安がある段階で一度、専門家にご相談ください。
© ひらま行政書士事務所 / 在留資格・帰化申請サポート
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