【1】外国人を雇用したら健康診断は必要?「常時使用する労働者」とは
外国人社員を雇用した場合でも、日本人社員と同様に、法律上の要件を満たせば健康診断を実施する必要があります。
労働安全衛生法第66条では、事業者に対して労働者の健康診断を実施する義務を定めています。
雇入れ時の健康診断については、労働安全衛生規則第43条で、事業者が「常時使用する労働者」を雇い入れるときに健康診断を実施しなければならないと定められています。
では、「常時使用する労働者」とは、どのような人を指すのでしょうか。
①「常時使用する労働者」は正社員だけではない
「常時使用する労働者」と聞くと、正社員だけが対象だと思うかもしれません。
しかし、健康診断の対象になるかどうかは、正社員・パート・アルバイトといった名称だけで決まるものではありません。
雇用期間や勤務時間などを踏まえて判断する必要があります。
たとえば、期間の定めのない労働契約で働く人や、1年以上継続して使用されることが予定されている有期契約の労働者は、雇入れ時健康診断の対象となる「常時使用する労働者」に該当します。
また、パートやアルバイトなどの短時間労働者についても、1週間の所定労働時間が、同じ事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である場合などには、健康診断の対象となります。
そのため、
「アルバイトだから健康診断は必要ない」
と一律に判断することはできません。
なお、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満であっても、一定の場合には健康診断を実施することが望ましいとされています。
②外国人社員も健康診断の対象
そして、外国人であることを理由に健康診断の対象から除外することはできません。
「常時使用する労働者」に該当するのであれば外国人社員も健康診断の対象となるため、会社に実施義務が生じるという点を認識しておくことがポイントです。
【2】外国人社員に必要な健康診断とは?
外国人社員を雇用する場合、まず確認したいのが「雇入れ時健康診断」と「定期健康診断」です。
①雇入れ時健康診断
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるとき、健康診断を実施する必要があります。
主な検査項目は、以下のとおりです。
- 既往歴・業務歴の調査
- 自覚症状・他覚症状の有無
- 身長・体重・腹囲・視力・聴力
- 胸部エックス線検査
- 血圧測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
なお、雇入れ前の3か月以内に健康診断を受けており、その結果を証明する書面を提出した場合には、一定の条件のもとで雇入れ時健康診断の項目を省略できる場合があります。
②定期健康診断
健康診断は入社時だけで終わりではありません。
常時使用する労働者については、1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施する必要があります。
もちろん、外国人社員も対象です。
また、一定の有害な業務に従事する場合には、一般的な健康診断とは別に特殊健康診断が必要になることがあります。
【3】外国人社員の健康診断で会社が注意したいポイント
外国人社員の場合、健康診断を実施するだけでなく、本人が制度を理解したうえで受診できるようにすることも重要です。
①健康診断の目的や内容を説明する
外国人社員の中には、日本の健康診断の仕組みを十分に知らない人もいます。
そのため、
- なぜ健康診断を受けるのか
- いつ、どこで受けるのか
- どのような検査をするのか
- 結果によっては医師による確認や必要な措置が行われること
などを、本人が理解できるよう説明しましょう。
特に日本語での意思疎通が難しい場合は、やさしい日本語や翻訳ツールなどを活用し、内容が伝わるよう配慮することが大切です。
②外国人社員本人にも原則として受診義務がある
健康診断は会社が実施するものですが、対象となる労働者本人にも原則として受診する義務があります。
労働安全衛生法第66条第5項では、労働者に対して、事業者が行う健康診断を受けなければならないと定めています。
そのため、外国人社員が健康診断を拒否した場合には、単に「会社のルールだから」と伝えるだけでなく、法律に基づく健康診断であることや、その目的を本人が理解できるよう説明することが重要です。
なお、会社が指定した医師による健康診断を希望しない場合でも、一定の条件を満たせば、別の医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社に提出することで対応できる場合があります。
\外国人社員の雇用について、ほかにも不安はありませんか?/
外国人社員を雇用する場合、健康診断だけでなく、在留資格や仕事内容などについても適切に管理することが大切です。
特に、入社後に担当業務を変更する場合や、在留期間の更新が近づいている場合には、現在の仕事内容が在留資格に適合しているか確認しておきましょう。
「この業務を任せても大丈夫?」
「就労ビザの更新に問題はない?」
といった不安がある場合は、早めに行政書士へご相談ください。
【4】健康診断の費用は会社が負担する?
会社に法律上の実施義務がある健康診断については、実施に必要な費用は会社が負担するのが基本です。
外国人社員だから本人に費用を負担してもらう、といった扱いにするのではなく、日本人社員と同様に取り扱います。
また、健康診断を受ける時間の賃金をどのように扱うかについては、一般健康診断と特殊健康診断で考え方が異なります。
一般健康診断については、受診時間を労働時間として扱うかなど、労務管理上の取り扱いをあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
【5】入社後は健康診断だけでなく在留資格の管理も重要
外国人社員を雇用した後は、健康診断を適切に実施することに加えて、在留資格に適した業務を行っているかを継続的に確認することも重要です。
外国人が日本で働く場合、在留資格ごとに認められている活動が定められています。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働く外国人社員について、入社後に担当業務を変更し、在留資格の対象外となる業務を継続的に行わせると、在留資格上の問題が生じる可能性があります。
特に注意したいのが、入社後の異動や業務内容の変更です。
採用時には在留資格に適合していても、その後の仕事内容が変わることで、在留資格との適合性に問題が生じるケースがあります。
そのため、外国人社員を雇用している企業では、健康診断などの労務管理とあわせて、
- 在留期間を管理する
- 担当業務に変更がないか確認する
- 業務内容が在留資格に適合しているか確認する
といった管理を行うことが大切です。
また、在留期間の更新では、現在の仕事内容や雇用状況なども確認されます。
「採用時に問題がなかったから大丈夫」と考えるのではなく、入社後も在留資格に適した業務を継続し、更新時に問題が生じないよう管理しておきましょう。
業務内容の変更を予定している場合や、現在の仕事が在留資格の範囲に含まれるか判断が難しい場合は、早めに行政書士へ相談することをおすすめします。
【まとめ】
外国人社員を雇用する場合でも、法律上の要件を満たす「常時使用する労働者」であれば、日本人社員と同様に健康診断を実施する必要があります。
この記事のポイントは、以下のとおりです。
- 外国人社員も健康診断の対象になる
- パート・アルバイトも一定の条件を満たせば対象になる
- 雇入れ時だけでなく、定期健康診断も必要
- 法律上実施義務のある健康診断の費用は会社負担が基本
- 対象となる外国人社員本人にも、原則として受診義務がある
- 外国人社員には、健康診断の目的や内容を理解できるよう配慮する
外国人だからといって健康診断の扱いが特別になるわけではありません。
対象となる労働者には、日本人社員と同じように適切な健康管理を行うことが会社の重要な役割です。
また、外国人社員を雇用する企業では、健康診断とは別に、入社後の在留資格や仕事内容についても適切に管理する必要があります。
外国人社員の雇用について不安な点がある場合は、問題が発生してから対応するのではなく、早めに専門家へ相談しましょう。
\外国人社員の就労ビザ・在留資格の管理でお困りではありませんか?/
外国人を雇用する場合、健康診断をはじめとする入社後の雇用管理だけでなく、在留資格に適した業務を行っているか、在留期間の更新に問題がないかについても継続して確認する必要があります。
特に、
- 外国人社員の担当業務を変更する予定がある
- 現在の仕事内容が在留資格に適合しているか不安
- 外国人社員の在留期間が近づいている
- 就労ビザの更新ができるか事前に確認したい
- 外国人社員の雇用管理について専門家に相談したい
といった場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
当事務所では、外国人の就労ビザ申請・更新を専門業務の一つとして、企業様からのご相談に対応しています。
就労ビザの更新では、申請時点の仕事内容や雇用状況などが重要になるため、更新時になってから確認するのではなく、日頃から在留資格に適した雇用管理を行っておくことが大切です。
外国人社員の雇用や就労ビザについて不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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