【1】外国人を雇用する企業にも就業規則は必要?
就業規則とは、勤務時間や休日、賃金、退職などの労働条件のほか、職場における基本的なルールを定めたものです。
労働基準法では、常時10人以上の従業員を使用する事業場について、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
ここでいう「10人」には、正社員だけでなく、パートやアルバイトなども含まれます。また、日本人と外国人を区別することはありません。
つまり、外国人を雇用している企業であっても、就業規則に関する基本的な考え方は、日本人のみを雇用している企業と変わりません。
就業規則を整備することで、従業員は自分の労働条件や職場で守るべきルールを確認できます。
また、企業と従業員の間で認識の違いが生じた場合にも、あらかじめ定めたルールを確認することで、トラブルの防止につながります。
一方で、従業員が10人未満の事業場では、法律上、就業規則の作成義務はありません。
しかし、複数の従業員を雇用している以上、勤務時間や休暇、賃金、退職などに関するルールを明確にしておくことは重要です。
特に外国人社員を雇用する場合、日本の労働慣行や職場のルールについて、企業と本人の認識に違いが生じることもあります。
そのため、人数が少ない場合でも、職場のルールを明文化し、外国人社員を含む従業員が確認できる状態にしておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。
なお、外国人を雇用したからといって、原則として外国人専用の就業規則を作成する必要はありません。
日本人と共通の就業規則を基本としながら、必要に応じて外国人雇用や在留資格に関する社内ルールを整理することが重要です。
【2】就業規則は外国人社員の母国語で作成すべき?
外国人社員を雇用する企業では、「就業規則を英語や本人の母国語に翻訳する必要がありますか?」という疑問も多いでしょう。
就業規則について、必ず外国人社員の母国語で作成しなければならないという法律上のルールはありません。
そのため、日本語で就業規則を作成していることだけを理由に、直ちに問題となるわけではありません。
ただし、就業規則は作成するだけではなく、従業員に周知する必要があります。
また、就業規則は単に閲覧できる状態にするだけでなく、職場のルールや労働条件を従業員に理解してもらうことが重要です。
特に外国人社員の場合、日本語の理解度や日本の職場文化への慣れによっては、日本語の就業規則を渡しただけでは内容を十分に理解できないことがあります。
例えば、以下のような従業員の働き方に大きく関係する事項については、内容を理解できるように説明することが望ましいでしょう。
- 賃金や勤務時間
- 休日・休暇
- 退職に関するルール
- 懲戒処分
- 職場で守るべきルール
すべての就業規則を必ず翻訳しなければならないわけではありませんが、日本語での理解が難しい外国人社員がいる場合には、重要な部分を翻訳したり、別途説明の機会を設けたりすることを検討するとよいでしょう。
単に「就業規則を渡した」だけではなく、外国人社員が実際に内容を理解できているかを意識することが大切です。
【3】外国人社員を雇用する企業が確認したい就業規則の記載事項
就業規則には、法律上記載が必要な事項があります。
外国人社員を雇用する場合でも、基本的な記載事項は日本人と同じです。
そのうえで、外国人雇用では特に注意したい項目があります。
①賃金に関する規定
外国人社員であっても、国籍を理由として不合理な賃金差を設けることは適切ではありません。
また、最低賃金制度は外国人にも適用されます。
就労ビザの申請では、報酬について、日本人が従事する場合と同等額以上であることが求められます。
そのため、雇用契約書や労働条件通知書に記載した給与と、実際の給与体系に大きな違いが生じないよう注意が必要です。
就労ビザの申請時に説明した雇用条件と実際の勤務状況が異なる場合、将来の在留期間更新などにも影響する可能性があります。
②配置転換や業務内容の変更
外国人社員を雇用する場合、就業規則に配置転換や職務変更に関する規定があることも珍しくありません。
しかし、外国人社員の場合は、どのような業務でも自由に担当させられるわけではありません。
特に「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザでは、実際の業務内容が在留資格で認められる活動に該当する必要があります。
例えば、当初は技術・人文知識・国際業務に該当する業務を担当していた外国人社員を、配置転換によって単純労働を中心とする業務へ変更した場合、在留資格との関係で問題となる可能性があります。
そのため、就業規則上の人事異動に関するルールだけでなく、実際にどのような業務を担当させるのかについても、在留資格との関係を確認することが重要です。
③在留資格に関する社内ルール
就業規則や別途定める社内規程などで、外国人社員の在留資格に関する届出ルールを整備する方法もあります。
例えば、
- 在留資格や在留期間に変更があった場合
- 在留カードを更新した場合
- 在留資格に関する重要な手続きを行った場合
などに、会社へ報告するルールを設けることが考えられます。
また、在留資格の更新が認められないなど、就労を継続できない事情が生じる場合もあります。
このような場合の取扱いについては、就業規則の規定だけで一律に判断するのではなく、実際の雇用契約や個別の事情も踏まえて慎重に対応する必要があります。
重要なのは、就業規則に記載することだけではなく、会社として実際に外国人社員の在留資格や在留期間を適切に管理できる体制を整えることです。
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【4】就業規則を作成・変更する際の注意点
就業規則を作成または変更する場合には、必要な手続きを確認することも重要です。
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則を作成・変更する際、労働者の過半数代表者などから意見を聴き、意見書を添付して届け出る必要があります。
外国人であることを理由に、過半数代表者になれないわけではないため、一定の条件を満たせば外国人社員が選出されることもあります。
なお、就業規則の作成・変更において求められているのは、労働者側の意見を聴くことです。
つまり、必ずしも就業規則の内容について、労働者側の同意を得なければならないという意味ではありません。
ただ、就業規則を作成・変更する際には、外国人であることを理由に、不合理または差別的な内容となっていないかを確認することも重要です。
外国人社員だけに過度な義務を課したり、国籍のみを理由として不利益な扱いをしたりするような規定は避ける必要があります。
また、就業規則の変更によって、実際の労働条件が就労ビザの申請時に説明した内容と大きく異なる場合には注意が必要です。
給与や業務内容などを変更する場合には、労務上の問題だけでなく、在留資格への影響も確認することをおすすめします。
【5】就業規則を作成した後は外国人社員への周知も重要
就業規則は、作成しただけでは十分ではありません。
従業員がいつでも内容を確認できる状態にし、適切に周知することが必要です。
具体的には、
- 職場の見やすい場所に掲示する
- 従業員が閲覧できる場所に備え付ける
- 書面で交付する
- 社内システムなどで閲覧できるようにする
といった方法があります。
日本人社員であっても、自社の就業規則をすべて細かく理解しているとは限らず、中には就業規則の存在すら知らないという人も多々いることでしょう。
まして、日本語や日本の職場文化にまだ慣れていない外国人社員の場合、書面を渡しただけでは内容を十分に理解できないことが考えられます。
そのため、外国人社員の日本語能力に応じて、重要な部分を翻訳したり、わかりやすい言葉で説明したりすることも検討するとよいでしょう。
特に、給与や勤務時間、休暇、退職、懲戒処分など、従業員の働き方に大きく関係する事項については、内容を理解できるよう配慮することが重要です。
外国人社員に就業規則を守らせることだけを目的とするのではなく、会社側のルールを理解してもらい、認識の違いによるトラブルを防ぐという視点も大切です。
外国人雇用のきっかけに就業規則を整備される企業に関しては、社内体制の整備として、日本人社員含め全社員に周知することも一考ですね。
【まとめ】外国人雇用では就業規則と在留資格の両方を確認
外国人を雇用する企業であっても、就業規則の基本的な考え方は日本人のみを雇用する企業と変わりません。
外国人専用の就業規則を必ず作成する必要はなく、基本的には共通の就業規則を適用することになります。
ただし、外国人雇用では、以下の点に注意が必要です。
- 外国人社員が就業規則の内容を理解できるようにする
- 賃金や労働条件に不合理な差を設けない
- 配置転換や業務変更が在留資格に影響しないか確認する
- 在留資格や在留期間を適切に管理する
- 作成・変更した就業規則を適切に周知する
また、就業規則を適切に整備していても、それだけで外国人雇用に関するすべての問題を防げるわけではありません。
特に2026年4月以降に関しては、社内の書類や入管への申請書類がいくら完璧でも外国人従業員の活動実態が在留資格の適合性がないと判断されると在留資格の取消や次回更新時に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そのため、実際の業務内容や雇用条件が、外国人社員の在留資格で認められる活動に適合しているかについても、継続的に確認する必要がありますので注意していきましょう。
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外国人雇用では、就業規則や社内ルールを整備することに加え、実際の業務内容や雇用条件が在留資格の範囲に適合しているかを継続的に確認することが重要です。
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