【1】永住ビザ申請における「素行善良要件」と交通違反の位置づけ
永住ビザの審査では、出入国在留管理庁が公表している「永住許可に関するガイドライン」が判断基準となります。
その中でも、交通違反と最も関係が深いのが、次の要件です。
①素行が善良であること
法律を遵守し、日常生活において社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
また、
②罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
という文言も明記されています。
つまり永住審査では、「日本でどのような生活態度を積み重ねてきたか」が厳しくチェックされ、その判断材料の一つとして交通違反歴が見られるのです。
【2】交通違反の基本整理|行政処分と刑事処分の違い
交通違反は、大きく分けて次の2種類に分類されます。
≪行政処分≫
比較的軽微な違反に対して、公安委員会が行う処分です。
違反点数が付されますが、前科はつきません。
≪刑事処分≫
重大な違反に対して、裁判所で判断される処分です。
罰金刑・懲役刑などが科され、前科がつきます。
永住申請において決定的に影響するのは、刑事処分に該当するかどうかが重要なポイントとなります。
【3】交通違反の内容別|永住審査への具体的な影響と判断基準
①比較的軽微な違反(白切符)の場合
白切符(告知票)は、「違反点数のみ」で、反則金や罰金が発生しない違反です。
(例)
・シートベルト装着義務違反
・チャイルドシート使用義務違反 など
≪実務上の評価≫
白切符が単発で1回のみであれば、永住審査に大きな影響を及ぼすことはほとんどありません。
ただし、申請書で問われた際に「書かなくていいだろう」と省略するのは危険です。
虚偽・不完全な申告そのものがマイナス評価になるため、必要に応じて正確に申告し、軽微性を説明することが重要です。
②比較的軽微だが注意が必要な違反(青切符)
青切符(交通反則告知書)は、「違反点数+反則金の納付が必要」な違反です。
(例)
・駐停車違反
・一般道30km/h未満の速度超過
・一時停止違反
・免許不携帯 など
反則金は刑事罰ではないため、形式上は「罰金刑」には該当しません。
しかし、永住審査では下記の状況の方については最も注意が必要となります。
≪不利になりやすいケース≫
- 過去5年以内に3回以上の青切符
- 直近1〜2年に集中して違反している
- 同種の違反を繰り返している
このような場合、「法令遵守意識に問題がある」と評価され、素行善良要件を満たさないと判断される可能性が高くなります。
行政書士が関与して実務で行う対策としては、違反の事実だけでなく、
- 軽微性
- 再発防止策
- 直近の無違反期間
などを整理した補足説明書を作成し、審査官に「現在の生活態度」を伝えます。
③重度の違反(赤切符)の場合
赤切符は、刑事手続を伴う重大な交通違反です。
(例)
・飲酒運転・酒気帯び運転
・無免許運転
・一般道30km/h以上の速度超過
・ひき逃げ・当て逃げ など
赤切符で罰金刑や懲役刑を受けた場合、原則として永住申請は不許可となります。
再申請の目安は以下のとおりです。
- 罰金刑:支払いから 5年
- 懲役・禁錮刑:出所後 10年(執行猶予の場合は満了後5年)
この期間が経過していない場合、他の条件を満たしていても申請は極めて困難です。
【4】交通違反がある場合に取るべき「永住申請までの実務ステップ」
交通違反がある場合、永住申請で最も重要なのは「申請してよい状態かどうかを、申請前に正確に見極めること」です。
単に「条件を満たしているから出す」ではなく、審査官の視点でどう見られるかを逆算する必要があります。
ここでは、実務で実際に行っている判断ステップを具体的に解説します。
ステップ①|運転記録証明書を必ず取得する
まず最初に行うべきことは、自分の記憶に頼らず、客観資料で事実を確認することです。
交通違反は、
「何年前だったか曖昧」
「回数を正確に覚えていない」
「軽い違反だから忘れていた」
というケースが非常に多く、これが申請書の記載ミス・虚偽申告につながりやすいポイントです。
永住申請前には必ず、自動車安全運転センターで「運転記録証明書(過去5年)」を取得し、以下を整理しましょう。
- 違反の種類(白・青・赤)
- 回数
- 最終違反日
忘れていただけ隠すつもりは一切なかったのに。というだけで審査官の印象を悪くしてしまうのは非常にもったいないので入念に確認しましょう。
ステップ②|「違反の質」と「違反の並び」を分析する
次に重要なのが、単純な回数ではなく、違反の質と時系列を見ることです。
例えば、
- 5年前に青切符1回 → その後無違反
- 直近1年で青切符が2回続いている
この2つは、審査上の評価がまったく異なります。
実務では、次のような視点で分析します。
- 違反が一時的なものか、継続的か
- 同じ違反を繰り返していないか
- 最近の生活態度に改善が見られるか
ここを誤って「まだ大丈夫だろう」と申請してしまうと、本来は時期をずらせば取れた永住が不許可になることもあります。
ステップ③|今すぐ申請すべきか、待つべきかを判断する
交通違反がある場合、「今出す」ことが最善とは限りません。
特に青切符が複数あるケースでは、
- 申請を1年遅らせる
- 無違反期間を明確に作る
だけで、許可可能性が大きく上がることがあります。
この判断は、
- 在留資格の種類
- 在留期間
- 家族構成
- 収入・納税状況
などとも密接に関係するため、交通違反だけを切り取って判断するのは非常に危険です。
ステップ④|説明が必要な場合は「書き方」が重要
交通違反がある場合、理由書・補足説明書を提出するかどうか、またどう書くかで結果が大きく変わります。
よくある失敗例として、
- 違反の事実だけを淡々と書いてしまう
- 反省文のようになってしまう
- 感情的・主観的な説明になっている
といったケースがあります。実務では、
- なぜ起きた違反なのか
- 一時的な事情であること
- 再発防止策が取られていること
- 現在は安定した生活を送っていること
を客観的・簡潔に整理して説明します。ここは、専門家の経験が最も反映される部分と言っても過言ではありません。
【5】行政書士が実際に行う「永住申請OK/見送り」判断ケーススタディ
ここからは、制度論ではなく、私たち永住申請専門の行政書士が実務で実際に行っている判断を、具体的なケースに当てはめてケーススタディ形式で解説します。
ケース①:青切符2回|5年以上前・現在は無違反
≪状況≫
- 違反内容:駐車違反・一時停止違反
- 違反時期:いずれも5年以上前
- 直近5年間:無違反
- その他要件:年収・納税・年金すべて問題なし
実務上の判断:申請OK
このケースでは、永住審査で交通違反が問題になる可能性は低いと判断します。
理由は、永住審査が見ているのは「過去の一点」ではなく、現在までの生活態度の積み重ねだからです。
違反が散発的で、かつ長期間にわたって無違反を維持している場合、素行善良要件を否定する事情にはなりにくいのが実務の実感です。
ただ、この場合でも、申請書に記載が必要な項目については正確に申告し、必要に応じて簡潔な補足説明を添えることで、審査官の疑問を未然に防ぐことが重要です。
ケース②:青切符3回|直近1〜2年に集中している
≪状況≫
- 違反内容:速度超過2回・携帯電話使用
- 違反時期:直近2年以内に集中
- 他の条件:永住要件は一見すべてクリア
実務上の判断:見送りを強く推奨
このケースは、「条件は揃っているのに不許可になる」典型例です。
回数そのものよりも問題になるのは、
- 違反が短期間に集中している
- 同種の違反を繰り返している
という点です。
この場合、審査官には「現在も法令遵守意識に問題があるのではないか」という疑念が生じやすく、素行善良要件を満たさないと判断されるリスクが高くなります。
実務では、最低でも2年以上の無違反期間を作ってから申請するようアドバイスします。一度不許可となると再申請はかなり難しくなります。
焦って申請して不許可になってしまい、結果的に遠回りになってしまわないように、万全の状態で申請することをおススメしております。
ケース③:赤切符(罰金刑)|支払いから3年経過
≪状況≫
- 違反内容:酒気帯び運転
- 刑事処分:罰金刑
- 経過期間:3年
実務上の判断:原則として申請不可
赤切符で刑事処分を受けている場合、ガイドライン上も実務上も、一定期間は永住申請が極めて困難です。
罰金刑の場合、目安は「支払いから5年」。
この期間が経過していない状態で申請すると、他の条件がどれだけ良くても不許可になる可能性が非常に高いのが現実です。
「一度だけだから」「もう反省しているから」という主観的事情は、残念ながら永住審査ではほとんど考慮されません。
【まとめ】交通違反がある場合の永住申請で本当に重要なこと
永住ビザ申請において、交通違反は「即アウト」ではありません。
しかし同時に、「軽い違反だから大丈夫」という単純な話でもありません。
重要なのは、
- 違反の種類(白・青・赤)
- 回数
- 時期(特に直近かどうか)
- 違反の傾向(繰り返し・集中)
- 現在の生活態度がどう評価されるか
これらを 総合的に整理して判断すること です。
ネット上には「青切符〇回までなら大丈夫」といった情報もありますが、実務ではそんな単純な基準は存在しません。
だからこそ、
「申請できるか微妙」
「一度でも不許可になるのは避けたい」
そう感じる方ほど、申請前の判断そのものが最重要になります。
永住申請、「出してみないと分からない」は最も危険です
交通違反がある状態での永住申請は、書類を出す前の判断で、結果の8割が決まると言っても過言ではありません。
- 今は申請していいのか
- もう少し待つべきなのか
- 説明書を出すべきか、出さない方がいいのか
これを誤ると、「条件は足りているのに不許可」という最も避けたい結果につながります。
当事務所では、永住申請専門の行政書士が、
- 交通違反の内容・時期・回数の精査
- 運転記録を踏まえた申請可否判断
- 審査官に伝えるべき点/触れない方がいい点の整理
まで含めて、不許可リスクを最小化する設計を行っています。
「自分の場合はどうなのか、一度は専門家の視点で確認したい」
そう感じた方は、申請前に一度ご相談ください。
© ひらま行政書士事務所 / 在留資格・帰化申請サポート
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