【1】永住ビザに「年収◯万円以上」という法律上の決まりはない
まず大前提として、永住ビザの年収要件には法律上の明確な金額基準は存在しません。
永住許可の判断基準は、出入国在留管理庁が公表している「永住許可に関するガイドライン」に基づき、
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
(将来において安定した生活が見込まれること)
という、非常に抽象的な表現で示されています。
つまり、永住審査で見られているのは
「この人(この世帯)は、今後も日本で安定して生活していけるか」
という一点です。
その判断材料の一つとして「年収」が見られているにすぎないのです。
①なぜ「年収300万円」という目安があるのか?
「明確な基準がない」とはいえ、実務上よく言われるのが年収300万円以上というラインです。
これは最低条件ではなく、説明なしでも“生活の安定性をイメージしてもらいやすい目安”として使われている数字にすぎません。実際の審査では、
- 単身か、配偶者・子がいるか
- 扶養人数は何人か
- 住居費・生活費はどの程度か
といった点を踏まえて、世帯全体のバランスが見られます。
そのため、同じ年収でも一人ひとり環境が異なりますので、許可される人/不許可になる人が出てくるのです。
今は年収300万円ですが、年々収入は上昇してきていることもあり今後は、引き上げられる可能性ももしかしたらあります。
【2】永住ビザ申請で審査される「年収」の対象期間と課税証明書の重要ポイント
永住ビザの年収要件を考えるうえで、多くの方が誤解しやすいのが「いつの年収が、どれくらいの期間、審査対象になるのか」という点です。
永住許可申請では、単年の年収だけを見るのではなく、「一定期間にわたり、安定した収入と生活基盤が継続しているか」が重視されます。
そのため、提出を求められる課税証明書の年数は、現在の在留資格や申請ルートによって大きく異なります。
①永住申請で年収がチェックされる「審査対象期間」の考え方
入管が確認しているのは、単なる金額ではありません。
- 一時的に年収が高かっただけではないか
- 生活が安定して継続していると言えるか
- 将来にわたって日本で生活できる蓋然性があるか
こうした点を判断するために、複数年にわたる課税実績が確認されます。
原則:直近5年分の課税証明書が必要なケース
以下の在留資格で永住申請をする場合、原則として直近5年分の住民税課税証明書・納税証明書が求められます。
定住者
就労系在留資格
(例:技術・人文知識・国際業務、経営・管理、技能 など)
この場合、5年間を通じて大きな年収のブレがないか、未納・滞納がないかが細かくチェックされます。
途中で年収が低い年があると、「安定性」に疑義を持たれる可能性があるため、申請時期や説明方法が非常に重要になります。
特に多い相談として、5年間の収入が「平均」300万以上あればいいか?という相談がありますが、「平均」と「継続」では状況が全く異なります。以下、パターン別で見てみましょう。
①「平均」300万円以上のパターン
5年前:年収220万円
4年前:年収200万円
3年前:年収350万円
2年前:年収900万円
1年前:年収750万円
平均→300万円以上
②「継続」300万円以上のパターン
5年前:年収310万円
4年前:年収310万円
3年前:年収320万円
2年前:年収305万円
1年前:年収320万円
①のパターンの方が合計も直近の年収も高いですが、入管は「安定性」を重視しますので、①では要件を満たしていないためこの状態で申請しても不許可となります。
逆に②のパターンは安定して300万円以上の収入がありますので、「安定性」が評価され、その他の要件を満たしていれば許可はおります。
▼定住ビザと永住ビザの違いについての詳細は下記コラムをご覧ください。
永住ビザと定住ビザの違いを完全比較|要件・更新・就労制限・永住申請への影響まで永住専門の行政書士が徹底解説
優遇①:直近3年分で足りるケース
次のような方は、審査対象期間が3年に短縮されます。
- 日本人の配偶者
- 永住者・特別永住者の配偶者
- 高度専門職(または特定活動)でポイント70点以上
- 高度専門職以外でも、申請3年前の時点でポイント70点以上を保有していた方
この区分では、身分関係や高度人材としての評価が加味されるため、就労系ビザよりも「年収面のハードル」は相対的に低くなります。
ただし、「3年分でよい=低くても問題ない」というわけではありません。
3年間の中身(安定性・納税状況)がより重要視される点には注意が必要です。
優遇②:直近1年分のみで足りるケース
さらに次のようなケースでは、審査対象が直近1年分にまで短縮されます。
- 日本人・永住者・特別永住者の実子(特別養子縁組含む)
- 高度専門職(または特定活動)でポイント80点以上
- 高度専門職以外でも、申請1年前の時点でポイント80点以上を保有していた方
この区分では、年収よりも身分関係や高度な能力評価が強く影響します。
ただし、1年分であっても「極端に低い」「生活が成り立たない」と判断されると不許可の可能性は否定できません。
高度専門職から永住ビザに変更する際の詳細については下記コラムをご覧ください。
【完全版】高度専門職ビザから永住ビザを最短で取得する方法|ポイント制度・必要書類・申請フローを徹底解説
②住民税「課税証明書」が永住申請で果たす役割
永住申請において、住民税の課税証明書は「年収確認」と「納税状況確認」を兼ねる最重要書類です。
課税証明書には、
- 課税対象となった所得金額
- 住民税額
が記載されており、入管はこの書類を基準に年収要件を判断します。
給与明細や源泉徴収票よりも、公的・客観的な証明書として重視される点が特徴です。
③課税証明書の「年度ズレ」に要注意|申請時期で不利になることも
ここは、多くの申請者が見落としがちな重要ポイントです。
住民税の課税証明書・納税証明書は、毎年5月中旬〜6月上旬に更新されます。
そして、証明書に記載される年収は「前年の所得」です。
≪具体例≫
令和6年度の課税証明書
→記載されるのは 令和5年中の年収
となります。
そのため、1月〜5月に永住申請をする場合、取得できる最新の課税証明書に記載される年収は、実質的に約2年前の収入というケースも珍しくありません。
「直近では年収が上がっているのに、課税証明書では低い年が出てしまう」という状況が起こりやすいのです。
申請をする前に必ずこの点に注意して書類確認をしましょう。
④年収が上がった直後に申請したい場合の実務対応
このような場合、実務上は次のような対応を取ることがあります。
- 申請時点では、最新の課税証明書を提出
- 併せて、源泉徴収票・給与明細・雇用契約書などで直近の収入状況を補足説明
- 6月以降に最新年度の課税証明書が取得でき次第、追加資料として提出
ただし、この対応が常に有効とは限りません。
どの書類を、どのタイミングで、どのような説明文とセットで出すかによって、審査官の受け取り方は大きく変わります。
「年収は足りているはずなのに、不安が残る」
「申請時期を今にすべきか、半年待つべきか迷っている」
こうしたケースこそ、専門家の判断が結果を左右しやすいポイントです。
判断に迷われたらそのまま進めずに専門家にご相談ください。
【3】配偶者の年収は永住ビザで合算できるのか?
結論から言うと、配偶者の年収は合算できる場合とできない場合があります。
①配偶者の年収を「世帯収入」として合算できるケース
≪1≫日本人配偶者ビザ・永住者配偶者ビザの場合
申請人が
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
といった身分系ビザで在留している場合、永住審査は「世帯単位」で行われます。
この場合、申請人本人の年収が300万円未満でも日本人(または永住者)配偶者に安定した収入があれば配偶者の年収を合算した世帯収入として評価されます。
実務上は、
- 配偶者が正社員等で継続的に就労している
- 同居しており、家計が一体である
- 婚姻実態が明確である
などと説明できれば、世帯収入ベースで永住許可が出ているケースは多くあります。
≪2≫共働きで、配偶者も就労ビザを持っている場合
申請人・配偶者の双方が技人国ビザなどの就労ビザを持ち(夫婦共に外国人)、適法に就労している場合、条件付きで世帯収入として合算評価されます。
例えば、
夫:外国人 技人国ビザ 270万
妻:外国人 技人国ビザ 280万
というような場合、「夫婦二人同時に永住申請をする場合」は合算可能となり、合計550万円の世帯収入として評価してもらえます。
しかし、どちらかが、先に永住ビザを取得しており、単独で申請する場合は合算できませんので注意してください。
②配偶者の年収を合算できないケース
≪1≫家族滞在ビザのアルバイト収入
非常に多い誤解が、「家族滞在ビザのアルバイト収入も世帯収入として合算できる」という考え方です。
結論として、家族滞在ビザの資格外活動によるアルバイト収入は、原則として合算対象外と考えるべきです。
理由は、
就労時間に制限がある
補助的・一時的収入と位置付けられている
将来の安定性を示す材料として弱い
ためです。
「配偶者が家族滞在でパートしているから大丈夫」という判断は、永住申請では非常に危険ですので注意しましょう。
③配偶者年収の合算可否を分ける「実務上の判断基準」
入管が見ているポイントは、次の3点に集約されます。
- 在留資格の性質(身分系か、就労系か)
- 世帯としての生活の一体性・継続性
- 収入構造を説明できる書類と文章があるか
つまり、「合算できるか?」ではなく、「合算して評価してもらえるだけの設計ができているか?」が結果を左右します。
【まとめ】永住ビザの年収要件は「金額」ではなく「設計」で決まる
永住ビザの年収要件について解説してきましたが、最も重要なポイントは次の一点に集約されます。
永住審査で見られているのは、年収の高さではなく「安定性」と「説明できる構造」です。
本記事で解説したとおり、
- 永住ビザに「年収〇万円以上」という明確な基準は存在しない
- 単年の高収入よりも、複数年にわたる安定した収入が評価される
- 課税証明書の提出年数や年度ズレを理解せずに申請すると、不利になることがある
- 配偶者の年収は、在留資格や申請方法によっては合算できるが、誰でも合算できるわけではない
- 家族滞在ビザのアルバイト収入は、原則として評価されにくい
といった点を正しく理解しているかどうかで、永住許可の結果は大きく変わります。
特に実務では、
「平均すると年収は高いが、安定性が弱いケース」
「直近で年収が上がったが、課税証明書に反映されていないケース」
「配偶者の収入を合算できると思っていたが、制度上評価されなかったケース」
など、知識不足や判断ミスによって不許可となる事例が後を絶ちません。
一方で、
- 「申請時期を少しずらす」
- 「収入構造を整理して説明する」
- 「世帯収入として評価される形に組み立て直す」
といった申請設計を行うだけで、許可に転じるケースも数多く存在します。
永住ビザは、一度不許可になると精神的・時間的な負担が非常に大きく、再申請までに長期間待たなければならないこともあります。
「条件は満たしている“はず”」
「何となく大丈夫そうだから申請しよう」
この判断が、最も危険ですので慎重に進めていきましょう。
年収や配偶者収入で少しでも不安がある方へ|申請前の確認が結果を分けます
ここまで読んで、
- 自分の年収は、安定していると評価されるのか
- 配偶者の収入は、本当に合算できるのか
- 今申請すべきか、半年待つべきか
- 課税証明書の内容で不利にならないか
このような不安や疑問を少しでも感じた方は、一度立ち止まって確認することを強くおすすめします。
永住ビザは、
「書類を揃えれば通る申請」ではなく、
「どう見せるか」「どう説明するか」で結果が変わる申請です。
当事務所では、永住ビザ申請を専門に取り扱い、
- 年収・課税証明書のチェック
- 配偶者収入の合算可否の実務判断
- 申請時期の戦略的アドバイス
- 不許可リスクの洗い出し
まで含めた事前診断・申請サポートを行っています。
「この条件で本当に通るのか知りたい」
「不許可になるリスクがあるなら、先に潰しておきたい」
「自分でやるか、依頼するか判断材料が欲しい」
そう感じた段階でのご相談が、最も費用対効果が高いタイミングです。
永住ビザは、人生設計に直結する重要な申請です。
後悔のない形で進めるためにも、申請前に一度、専門家の視点を入れてみてください。
© ひらま行政書士事務所 / 在留資格・帰化申請サポート
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