第1章 永住と帰化の違いを理解しよう
まず大前提として、「永住」と「帰化」は次のように異なります。
| 比較項目 | 永住ビザ | 帰化 |
| 国籍 | 外国籍のまま | 日本国籍を取得 |
| 権利 | 永続的な在留資格 | 日本人と同等の法的地位 |
| 管轄 | 出入国在留管理庁 | 法務局 |
| 審査基準 | 経済力・素行・社会的安定 | 素行・生計・日本への定着意思等 |
つまり、永住ビザは「在留資格の最上位」ですが、帰化は「国籍の変更」という別の次元の手続きです。
第2章 永住者が陥りやすい5つの落とし穴
特に、誤解が生じやすい点としては「長く日本に住んでいれば帰化は有利」ということです。
永住ビザをお持ちの方はある程度日本に長く住んでいらっしゃると思います。
なので、その分帰化申請もしやすいでしょ!と考えている方もいらっしゃいますが、逆に不利になってしまう可能性も時にはございます。
帰化申請では日本での暮らしについて全て審査されます。
学生の時から日本に来ている方であれば、どこの学校に行ってたのか、就職先はどこだったのか、住んでた場所はどこか等など。
例えば日本に10年間いる人と、20年間いる人では日本での生活について審査される期間が大きく変わります。
中でも、下記の①と②については長く住んでいればいるほど、注意が必要な内容ですので気を付けましょう。
【落とし穴①】納税・社会保険の未納・遅滞
永住者でも意外と多いのが、税金や年金の未納・遅滞です。
特に自営業者やフリーランスの方は、国民健康保険や住民税を毎月きちんと払っていないケースもございます。
帰化申請では、「直近1~2年分の納税証明書(自営業者は3年分)」や「社会保険料の支払記録」を提出します。
少しでも滞納があると、審査官から「日本国民としての自覚が不足している」と見なされることもあります。
≪ポイント≫
納付は「期限内」に行うことが重要。
まとめ払い・延滞金支払いでも「遅れた事実」は残ってしまいます。
審査では「習慣として真面目に納税しているか」が見られます。最低でも2年間は送れずに支払いを済ませましょう。
また、帰化申請では預金通帳も提出します。
審査官は、毎月のお金の使い方、収入と支出のバランスは合ってるか、といった視点でチェックしますので、日ごろのお金の使い方からも注意していきましょう。
【落とし穴②】 軽微な交通違反を軽視している
帰化申請では永住申請と違い、【軽微な交通違反(スピード違反や駐車違反)】は「素行善良要件」として細かく確認されます。
違反点数や罰金額に関係なく、繰り返し違反しているとマイナス評価になります。
≪対策≫
3年以内に複数回の違反がある場合は、少なくとも1~2年間は「違反ゼロ期間」をつくる。
ゴールド免許であれば大きなプラス評価になります。
帰化申請を考えている場合は、日ごろから交通ルールに気を付けて運転をしていきましょう。
【落とし穴③】 「国籍離脱」の手続きを誤解している
特に韓国・中国・フィリピンなどの国籍の方に多い誤解ですが、
帰化許可後には「元の国籍を離脱する手続き」が必要です。
「自動的に日本国籍だけになる」と思って放置してしまうと、
母国での戸籍や税務処理が複雑化し、トラブルの原因になることも。
≪帰化後の確認≫
国によって制度は大きく異なり、
- 自動で国籍を失う国
- 離脱申請が必要な国
- 離脱手続きがそもそも存在しない国
など、対応はさまざまです。どんな手続きが必要なのかということは事前に調べておきましょう。複雑でわかりにくい、、という場合については当事務所のように帰化を専門としている専門家にご相談ください。
【落とし穴④】 「動機書」を軽視してしまう
帰化申請における「動機書」は形式的なだけ。と思われがちですが、実は審査官が重視する書類のひとつです。
法務局の面接では、動機書の内容に基づいて質問が行われます。
形式的すぎる内容だと「帰化への意欲が低い」と判断される可能性もありますので注意が必要です。
≪好印象を与える動機書のポイント≫
- 「日本に来てからの暮らし」「家族」「地域」「将来への貢献」等を具体的に書く
- テンプレートではなく、自分の言葉でまとめる
- 専門家に添削してもらうと、説得力が格段に上がる
特に、以前申請した書類や面接の時との整合性が重要になりますので、矛盾が無いように作成することを心掛けてください。
【落とし穴⑤】 「書類は永住と同じ」と思い込む
永住申請と帰化申請は似た書類も多いですが、実際には提出先も審査観点も全く異なります。
例えば:
| 書類名 | 永住申請 | 帰化申請 |
| 在職証明書 | 〇 | 〇 |
| 源泉徴収票 | 〇 | 〇 |
| 戸籍謄本 | × | 〇 |
| 出生証明書 | × | 〇 |
| 動機書 | × | 〇 |
上記の書類はあくまでも一部です。帰化申請にあたり提出する書類は100~200ページと膨大な量のため、永住ビザの申請時とは大きく異なります。
また、帰化では、母国の出生・婚姻・家族関係証明書など、翻訳を伴う書類が必須となります。
この翻訳が不十分だと、「書類不備」で再提出になることも少なくありません。
第3章 自分でできる?それとも専門家に任せるべき?
帰化申請は、実際のところ書類さえ集められれば申請自体は自分でも行えます。
ただし、次のような方は行政書士に依頼した方が確実です。
| 状況 | 理由 |
| 年金・税金の未納がある(あった) | 修正・補完資料の提出が必要 |
| 交通違反が複数ある | 申請時期の調整が必要 |
| 書類が母国語で大量にある | 翻訳の精度が重要 |
| 就労状況が変わっている | 安定性の説明資料が必要 |
| 永住権を取得して5年未満 | 帰化要件の居住期間を確認 |
| 書類集めが難しい | 必要書類一覧をもらうことにより時間の効率化 |
上述しましたが、帰化申請で提出する書類は100~200ページと膨大な量となります。
作成する書類に不備があり再提出になると、それだけで数カ月の遅れが生じてしまうケースも少なくありません。
「自分でもできそうだけど、ミスしたくない」
そんな方こそ、行政書士に依頼することで時間とリスクを最小化できます。
第4章 審査をスムーズに進めるためのチェックリスト
| 納税・保険料の未納がないか 過去3年間の交通違反がないか 住所・勤務先が安定しているか 家族構成や婚姻関係が整理されているか 動機書が自分の言葉で書かれているか 翻訳書類に誤りがないか 日本国内の役所の書類は有効期限内か(3ヶ月以内のもの) |
上記のチェック項目について、少しでも不安があればそのまま申請するのは危険です。すぐに専門家にご相談してみてください。
【まとめ】永住者の方が帰化でつまずかないために
永住ビザをお持ちの方ほど、「自分は問題ない」と思い込みがちです。
しかし、帰化審査では日本国民としての「自覚」と「誠実さ」が問われます。
特に長く日本に住んでいらっしゃる方は注意して、日本に来てからの生活を振り返ってみてください。
そういえば、あの時こんなことしちゃったな、ということは一つは出てくると思います。
税金・年金・交通違反・書類の正確性――
どれも「小さなこと」に見えて、実は帰化の可否を左右する要素です。
もしあなたが「いつか日本国籍を取りたい」と考えているなら、
申請の1年前から準備を始めるのが理想です。
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